<ディスクロージャー&ディスカバリー>警察による違法な個人情報の収集からいかに市民を護るか

<ディスクロージャー&ディスカバリー>警察による違法な個人情報の収集からいかに市民を護るか

 岐阜県警が市民の個人情報を違法に収集しそれを民間企業に提供していたことが明らかになった。 事件は岐阜県警大垣署の警察官が、中部電力の子会社であるシーテック社が進める風力発電事業に反対する地域市民らの個人情報を収集し、それをシーテック社に提供していたというもの。2013年から2014年にかけて警察がシーテック社に提供した情報を朝日新聞が入手し2014年7月24日に報道したことで、事件が明るみに出た。なお、全国市民オンブズマン連絡会議によると、中部電力ならびにシーテック社は警察の天下り先になっている。 この事件がとりわけ悪質なのは、大型の風力発電が設置されることによる騒音や環境への影響などを懸念した地域住民が、勉強会などを開催して事業に反対の姿勢を見せる中、警察側が頼まれもしないのに反対派市民の病歴や市民活動の経験などを含む個人情報を収集し、風力発電事業の事業主体であるシーテック社に提供していたことだ。 個人情報保護法は行政機関に所掌事務に必要な限度でのみ個人情報を収集することを認めている。しかし、今回の事案は警察が反対派の住民を敵視し、事業者に便宜を供与する目的でデリケートな個人情報を提供したものであり、明らかに所掌事務に必要な限度を超えている。また、個人情報保護法順守の対象となるシーテック社に不必要な個人情報の収集という違法行為を警察の側から促したことも大きな問題だ。 新聞報道で自分たちの個人情報が違法に収集され事業者側に提供されたことを知った住民らが、国家賠償と個人情報の抹消を求めて県と国を提訴した結果、2024年9月13日、名古屋高裁は、国家賠償と個人情報の抹消を命じる判決を出している。判決は住民が事業に反対することやそのための勉強会を開くことを憲法で認められた権利と認定した上で、市民を敵視する警察が事業者と結託して憲法上の権利の行使を妨害し市民運動を潰そうと画策するのは警察の業務から逸脱していると断罪している。 しかし、今回、警察による違法な情報収集が明らかになったのは、たまたま朝日新聞がシーテック側から警察が提供した情報内容がわかる資料を入手し、それを報道したからだった。実際、裁判で原告は警察が違法に収集した情報の開示を求めたが、警察側はそのような情報の存在を確認することさえ拒否している。警察は捜査機関として広い裁量を認められているため、情報公開法に基づいて警察が持っている情報を開示させるのは事実上不可能に近い。 この事件は不透明、あるいは不純な動機に基づく違法な個人情報の収集・提供が日本の警察組織において横行している可能性を示唆している。そのような状況を少しでも改善するためには、真正面から情報公開請求を行うだけでは不十分だ。警察の開示拒否に遭い、審査会でも警察の裁量を認める決定が出ることは目に見えているからだ。 今回の事件のように、民間企業が警察による違法な情報収集が行われていることを知ったときは積極的に公益通報を行う必要がある。公務員には公務員法の守秘義務が課せられているため、違法行為があっても公務員の側から公益通報が行われることは期待しにくい。 岐阜県警大垣署で明らかになった警察による個人情報の違法収集・提供事件のあらましと、警察をいかに市民監視していくか、そのために何が必要かなどについて、情報公開クリアリングハウス理事長の三木由希子とジャーナリストの神保哲生が議論した。(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)

http://www.nicovideo.jp/watch/so44158414