<マル激・前半>新しい「育成就労」制度の下で日本は外国人労働者に定着してもらえる国になれるのか/安里和晃氏(京都大学大学院文学研究科准教授)

<マル激・前半>新しい「育成就労」制度の下で日本は外国人労働者に定着してもらえる国になれるのか/安里和晃氏(京都大学大学院文学研究科准教授)

 日本で働く外国人労働者の数が去年200万人を超えた。 人手不足が続く日本で、長期間産業を支える人材を確保するためには、外国人労働者が不可欠なことは誰の目にも明らかだろう。 外国人労働者については、これまで人権侵害や失踪者の増加など多くの問題が指摘されていた従来の技能実習制度を廃止し、新たな制度を設ける法律が作られた。技能実習制度は建前上は国際貢献を目的としていたが、実際には労働力不足を補うために利用されるなど、実態と目的が解離していた。しかもこの制度の下では、年間1万人近い人が失踪するなど、外国人労働者の人権が蔑ろにされていることがたびたび問題視され、アメリカ国務省の報告書では人身取引とまで批判されてきた。 新たな法律の制定で技能実習制度はようやく廃止となる。 入れ替わりで導入されるのが、人材確保と育成を目的とする「育成就労」制度と呼ばれるもので、原則3年の就労を通じて特定技能1号水準の人材を育成することを目的とするなど、技能実習制度と比べれば少なくとも目的に即した制度となることが期待される。また、旧制度では転職が認められていないことが人権侵害やハラスメントなどの原因となっていたが、新たな制度では一定の条件の下で転職も認めている。受け入れ対象分野も、建設、農業、介護、外食業など、その後の在留資格と合わせてキャリアアップの道筋がより見えやすい形となることが期待されている。 技能実習制度など外国人労働の実態に詳しく、実際に外国人労働者の相談にも乗ってきた京都大学の安里和晃氏は、新たな制度の導入によりこれまで単純労働と高度人材に二極化していた外国人労働者の扱いが、ある程度はしごをかけた形になることに一定の評価をしつつも、長らく問題が指摘されてきた制度の改正にここまで時間がかかったことを問題視する。安里氏はその背景に、外国人労働者は主に出入国管理庁の管轄下に置かれてきたために、労働者として扱われずに来た経緯があると指摘する。 また、新たな制度の下でも家族の帯同は認められていない。安里氏は、これを労働力としての外国人は欲しいが、移民は受け入れたくないという政府の身勝手な姿勢の表れだとして、これをダブルスタンダードだと批判する。これでは日本は外国人労働者に来てほしいのかほしくないのかがはっきりせず、働く人から見れば長期的に安心して働くことができない。 実際に介護の現場で働く外国人の例などを交えながら、新たな育成就労制度の下で外国人労働者の人権を守りつつ、労働力の確保が可能になるのか、グローバルな人材獲得競争のなかで日本が生き残る道はどこにあるのかなどを、安里和晃氏と社会学者の宮台真司、ジャーナリストの迫田朋子が議論した。後半はこちら→ so43916958 (本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)

http://www.nicovideo.jp/watch/so43916954