原材料の高騰などで値上げの波が止まりません。100円パンで地域に親しまれたパン屋さんは、100円を136円にする36%の大幅値上げに踏み切りました。しかし、売れ行きは順調です。値上げをしても客が離れない秘密を取材しました。◆企業努力では追いつかず…やむなく値上げおいしそうなメロンパンに、こんがり焼けたクリームパン。カレーパンはいつも揚げたてです。福岡県久留米市に本社を置く「京都伊三郎製ぱん」。ほとんどパンが1個100円で楽しめることが話題を呼び、現在はフランチャイズ店もあわせて県内で19店舗、全国で51店舗を展開しています。しかし、2022年、苦渋の決断をしました。社員「おととしくらいから、ビジネスとして100円パンでやっていくことが厳しくなってきて…」小麦などの原材料の値上がりや人件費のアップなどを受け、2021年から100円を超える高価格帯を設けるなど企業努力を続けてきましたが、やむを得ず2022年から直営店で一部の商品を除いて順次値上げしています。100円を136円に、36%の大幅値上げに踏み切るにあたり、「伊三郎製ぱん」は、メニューをひとつひとつ見直すことにしました。◆値上げした以上はクオリティも上げるこちらは、タラコとイモを混ぜた「たらもスペシャル」。左がこれまで100円で販売していたもので、右が値上げに合わせてメニューを見直したものです。一回りパンが大きくなったほか、大葉を追加しています。こちらはウインナーパン。これまでより大きくしたほか、ソーセージをよりおいしいものに変更し、味付けにマスタードも加えました。社員「商品のクオリティも全体的に上がって、大きさ、中身の量、ラインナップもけっこう変わっています」宗像店でも値上げに合わせたリニューアルオープンが決まりました。店長の請田歩武さんは、100円パンで親しんでくれていた客が値上げを受け入れてくれるのか不安だと話します。請田歩武店長「100円パンという名で通っていたので、原価高騰の中でもそういう不安はありますね」◆「おいしいのが一番」「いらっしゃいませー」「お待たせしましたー」午前9時の開店と同時に多くの人が訪れ、パンを手に取っていきます。客「安くておいしいのが何よりですよね。よく買うのが、きょうも買いましたけどカレーパン。値上げしたと言ってもそんなに高くないですから、なによりおいしいのが一番なので」客「値上げは仕方がないんじゃないですか。昔お好み焼きみたいな“おこのみパン”があって、とてもおいしかったので、リバイバルしてほしいな」◆「おいしいパンを届けられるように」ただの値上げに終わらせず、メニューの改良や新商品の開発で客の心をつかんだ伊三郎製ぱん、「付加価値をつけた値上げ」は、仕入れ値の高騰に悩む飲食業界にとって、問題解決の大きなヒントとなりそうです。社員「最初は焦りもあったのですけど、お客様の反応も見て一安心。美味しいパンを食べていただきたいので、クオリティを重視して頑張っていきたいです」