いつの間にか自動的に点灯していたヘッドライトが――猪だったのか猿だったのか、もう今となってはどうでもいいことだが――目の前を横切る何かを照らし出す。それを見て反射的にハンドルを切ったのがよくなかった。前輪が道を踏み外したかと思った頃にはもう遅く、車は崖から飛び出してほとんど垂直に近い急斜面を転がり落ちてゆく。めきめきと枝の折れる音や窓ガラスが粉々に砕ける音が耳に残っている。そして記憶はそこで途切れているのだった。「とおいよびごえ」凋叶棕/RD-Sounds https://open.spotify.com/intl-ja/track/3lGlLjMc4kVnIchMIMYBkz 元となったSS https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=22894870