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<ニュース・コメンタリー>アメリカFCCが決断したネットの中立性 インターネットは誰のものか
アメリカ連邦通信委員会(FCC)は、2月26日、インターネットの回線事業者が、料金を払った特定のサービス提供者に回線の帯域を優先的に割り当てることを禁止する「ネット中立性ルール」を採択した。
これはオバマ大統領が推進するオープンインターネット政策の一環で、この日の決定により、インターネットを電話線のような公共的なインフラ(公益通信事業者)と位置づけ、回線業者は支払った費用に応じてサービス事業者を差別することが禁止されることになる。
これまでアメリカでは、ネットフリックスに代表される高画質の動画サービスを大量に提供するサービス事業者に対し、ATT、ベライゾン、ケーブルテレビ局といったブロードバンド回線を保有する事業者が、サービス事業者から一定の料金を徴収することで、回線を優先的に利用させることが認められていた。しかし、これが許されれば、回線業者に費用を払わないウェブサイトでは回線が遅くなったり動画がスムーズに流れなくなるなど、ネット内で格差が生じる可能性があり、インターネットの民主性が損なわれるとして、ネットの自由を主張する市民団体などが強く反対してきた。
今回の採決に先立ってFCCが実施したパブリック・コメントには、400万件を超えるコメントが寄せられ、そのほとんどがネットの自由の維持を求めるものだったという。
FCCのトム・ウィーラー委員長は、「インターネットへの自由かつオープンなアクセスへの政府や民間事業者の支配を認めてはならない。インターネットはブロードバンド業者が支配するにはあまりにも重要な分野だ」と述べた。
これに対して採択で反対票を投じた共和党系のアジット・パイ委員は「FCCがインターネットの自由に政府の規制を持ち込んだ残念な結果だ」と述べた。
FCCの採択ではネットの自由を守るためには一定の規制が必要とする民主党系の委員と、自由を守るためであっても、政府が規制をすべきではないとする共和党系の委員が2対2で真っ向から衝突し、ウィーラー委員長が賛成に回ったことで、新ルールが採択された。
人気のあるブロードバンドコンテンツに乏しい日本では、まだ回線の混雑が大きな問題となっていないため、この問題は対岸の火事のようにも思える。しかし、いずれ日本でもコンテンツが充実してくれば、「ネットは誰のものか」をめぐる議論が起きることは必至だ。
自由であるべきインターネットで、アクセスの自由を守るための規制は正当化されるのか。インターネットは誰のためにあるものなのか。ジャーナリストの神保哲生と憲法学者の木村草太が議論した。