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【後半会員限定パート】【無料前半パート】「映画『うんこと死体の復権』を深掘する!」ゲスト:関野吉晴(探検家・本作監督)、舘野鴻(絵本作家)/(2024年8月22日放送)
映画『うんこと死体の復権』公式サイト
https://www.unkotoshitai.com/
●8月22日(木)21時から生配信
●ゲスト:関野吉晴(探検家、医師)、舘野 鴻(絵本作家)
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
【無料前半パート】「映画『うんこと死体の復権』を深掘する!」ゲスト:関野吉晴(探検家・本作監督)、舘野 鴻(絵本作家)/(2024年8月22日放送)
■映画『うんこと死体の復権』https://www.unkotoshitai.com/
●日時:8月22日(木)21時から生配信
●ゲスト:関野吉晴(探検家・本作監督)、舘野 鴻(絵本作家)
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
【後半会員限定パート】大澤真幸氏出演!「新刊『我々の死者と未来の他者 戦後日本人が失ったもの』を深掘りする!」 (2024年8月8日放送)
●8月8日(木)21時から生配信
●ゲスト:大澤真幸
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
【前半無料パート】大澤真幸氏出演!「新刊『我々の死者と未来の他者 戦後日本人が失ったもの』を深掘りする!」 (2024年8月8日放送)
【番組について】
●8月8日(木)21時から生配信
●ゲスト:大澤真幸
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
【後半会員限定パート】「躁鬱時代を生きのびるための幸福論」ゲスト:坂口恭平(2024年7月26日放送)
坂口恭平出演!「躁鬱時代を生きのびるための幸福論」
●7月25日(木)21時から生配信
●ゲスト:坂口恭平
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
【前半無料パート】坂口恭平出演!「躁鬱時代を生きのびるための幸福論」 (2024年7月25日放送)
坂口恭平出演!「躁鬱時代を生きのびるための幸福論」
●7月25日(木)21時から生配信
●ゲスト:坂口恭平
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
<マル激・後半>「年収の壁」と「働き控え」を克服するためのベストな方法とは /是枝俊悟氏(大和総研主任研究員)
なかなか賃金が上がらない日本で、どうすれば働く人の手取りを増やすことができるのか。そして、そもそも手取りを増やすことが今、日本にとって最優先されるべき課題なのか。
先の総選挙で「手取りを増やす」をスローガンに掲げ大きく躍進した国民民主党に、過半数割れした自公連立政権が政策協力を申し入れたことで、かねてから国民民主党が主張してきた「103万円の壁」問題が大きな政治的争点として持ち上がっている。予算を始めあらゆる法案を通すために国民民主党の協力が不可欠となった自公連立政権は、同党の要求はある程度呑まざるを得ないからだ。
国民民主党はアルバイト学生やパート労働者の年収が103万円を超えると新たに税負担などが発生するため、300万人近い人が意図的に労働時間を制限し収入を低く抑える「働き控え」をしているとして、壁の大幅な引き上げを求めている。
いわゆる103万円の壁というのは、パートやアルバイトのその年の収入が103万円を超えると、本人に所得税が課されるようになるほか、親が特定扶養控除を受けられなくなり、結果的に世帯の税負担が増えてしまう問題のことだ。下手に収入が103万円を超えてしまうと、むしろ手取りが減ってしまう場合もある。
国民民主党は103万円の課税基準が設定された1995年から2024年までの間に最低賃金が1.73倍に増えていることから、課税基準も現在の103万円の1.73倍にあたる178万円まで引き上げるべきだと主張している。
実際、働き控えは世帯の収入を低く抑えていることに加え、企業側から見ると、既に深刻な人手不足に拍車をかけている。特に年末にかけてパートやアルバイトのその年の収入が103万円に近づいてくると、それ以上働いてもらえないという現象が方々で起きている。ちょうど年末の書き入れ時に103万円の壁が理由で働いてもらえないのは、企業にとっても痛い。働く側ももっと働きたいし、雇う側ももっと働いてほしいのに、この壁のために働けないというのは勿体ないを超えて理不尽でさえある。
しかし、では国民民主党の主張するように、103万円の壁を178万円に引き上げれば問題はすべて解決するかというと、事はそう簡単ではない。
まず、そもそも103万円の壁を178万円に引き上げるという場合、その内訳をどうするかを決めなければならない。103万円の壁、すなわち所得税の課税基準が103万円からになっている理由は、年収2400万円以上を除くすべての給与所得者が一律で受けられる基礎控除額の48万円と、給与所得控除額の最低水準が55万円なので、それを合わせると103万円になるからだ。その壁を178万円まで引き上げる場合、基礎控除額と給与所得控除額のどちらをどれだけ上げるかによって、恩恵を受ける人や税収への影響に大きな違いが出てくる。
国民民主は基礎控除のみ現在の48万円から123万円まで引き上げることで全体を178万円にする案を主張しているが、その場合、高所得者ほど減税額が大きくなる上に、税収が7兆円以上の減収となる。高所得者に減税の対象を拡げてまで税収をそこまで削ることが正当化できるかどうかが問題となる。
是枝氏は、仮にどうしても壁を178万円まで引き上げる必要があるのなら、基礎控除と給与所得控除の両方をバランスよく引き上げるべきだという。その場合、全体としての減税効果は小さくなるが、低所得層、とりわけ働き控えをしている人の手取りは確実に増える。
親の扶養に入っている大学生のアルバイト収入が103万円を超えると、本人が超過分に対して5%の所得税を課されることに加え、親が特定扶養控除を受けられなくなる。特定扶養控除は所得税分と住民税分を合わせると108万円にもなるため、世帯全体で考えた時の節税効果は大きい。逆に見れば、これを失えば、世帯によっては10万円以上の増税となる。大和総研主任研究員の是枝俊悟氏は、この壁をおよそ180万円くらいまで上げることは現実的に可能だという。
年収の壁には103万円の壁以外にも、パートの働き先が大企業の場合は106万円、中小企業の場合は130万円に大きな壁がある。これは配偶者の扶養に入っている第3号被保険者の年収がこの金額を超えると、夫(妻)の扶養から抜けて自身の社会保険料を負担しなければならなくなる。これもその金額を超えた瞬間に手取りの大幅な減少を招くため、壁になっている。同じくアルバイト学生も、年収が130万円に達すると親の扶養を抜けて自身で保険料を支払わなければならなくなる。
しかし、是枝氏は103万円の壁と比べると、106万円の壁や130万円の壁の見直しはすぐには難しいと言う。壁をなくすには、2つの選択肢の中から選ぶ必要がある。1つは、壁の数字を例えば180万円くらいまで上げて、年収がそこに達するまでは社会保険に入らなくてもよいとする道と、逆に基準を50万円くらいまで下げて、誰もが社会保険に入らなければならないようにする道だ。
壁を180万円まで引き上げれば、年収がその金額に達するまでは社会保険料を払わなくて済むので短期的にはありがたく見えるかもしれないが、その人は将来、最低水準の国民年金しか受け取ることができなくなる。その一方で、壁を下げれば、これまで保険料を払わなくてよかった人や会社に、新たな支払いを求めることになるので、それはそれで強い抵抗に遭うことが避けられない。結局のところ、いいとこ取りはできないという話だが、どちらにするにしても国民的な合意形成が必要になるだろう。
現下の物価高で生活苦に喘ぐ人は確実に増えている。何らかの支援は必要だ。しかし、国民民主党が選挙で上手にアピールした「手取りを増やす」、「103万円の壁」といったレトリックに引きずられて、結果的に7兆円規模の恒久減税を行うことの是非やその影響に対しては、慎重な検討が必要だ。例えば、学生アルバイトに関しては、壁を引き上げてもっと働けるようにするのも結構だが、そもそも多くの大学生が学業をそっちのけで毎月10万円ものアルバイト代を稼がなければならない状態を放置していていいのか。内閣府の調査では日本の大学生がアルバイトに費やしている時間は他国と比べても群を抜いているという。ならば103万円の壁を取り払うと同時に、国際的にも低い水準になる教育に対する公的支出を増やすことで学生や学生を持つ親の負担を軽くしたり、学生が学業に専念できるような教育改革なども同時に進めなければ、本末転倒にならないか。
国民民主党が主張する「103万円の壁の見直し」の本質はどこにあるのか、単に壁を引き上げれば問題は解決するのか、働き控えの解消や手取りを増やすためにはどのような政策的選択肢があるのかなどについて、厚労省の社会保障審議会年金部会の委員も務める是枝俊悟氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
前半はこちら→so44328525
(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
<マル激・前半>「年収の壁」と「働き控え」を克服するためのベストな方法とは /是枝俊悟氏(大和総研主任研究員)
なかなか賃金が上がらない日本で、どうすれば働く人の手取りを増やすことができるのか。そして、そもそも手取りを増やすことが今、日本にとって最優先されるべき課題なのか。
先の総選挙で「手取りを増やす」をスローガンに掲げ大きく躍進した国民民主党に、過半数割れした自公連立政権が政策協力を申し入れたことで、かねてから国民民主党が主張してきた「103万円の壁」問題が大きな政治的争点として持ち上がっている。予算を始めあらゆる法案を通すために国民民主党の協力が不可欠となった自公連立政権は、同党の要求はある程度呑まざるを得ないからだ。
国民民主党はアルバイト学生やパート労働者の年収が103万円を超えると新たに税負担などが発生するため、300万人近い人が意図的に労働時間を制限し収入を低く抑える「働き控え」をしているとして、壁の大幅な引き上げを求めている。
いわゆる103万円の壁というのは、パートやアルバイトのその年の収入が103万円を超えると、本人に所得税が課されるようになるほか、親が特定扶養控除を受けられなくなり、結果的に世帯の税負担が増えてしまう問題のことだ。下手に収入が103万円を超えてしまうと、むしろ手取りが減ってしまう場合もある。
国民民主党は103万円の課税基準が設定された1995年から2024年までの間に最低賃金が1.73倍に増えていることから、課税基準も現在の103万円の1.73倍にあたる178万円まで引き上げるべきだと主張している。
実際、働き控えは世帯の収入を低く抑えていることに加え、企業側から見ると、既に深刻な人手不足に拍車をかけている。特に年末にかけてパートやアルバイトのその年の収入が103万円に近づいてくると、それ以上働いてもらえないという現象が方々で起きている。ちょうど年末の書き入れ時に103万円の壁が理由で働いてもらえないのは、企業にとっても痛い。働く側ももっと働きたいし、雇う側ももっと働いてほしいのに、この壁のために働けないというのは勿体ないを超えて理不尽でさえある。
しかし、では国民民主党の主張するように、103万円の壁を178万円に引き上げれば問題はすべて解決するかというと、事はそう簡単ではない。
まず、そもそも103万円の壁を178万円に引き上げるという場合、その内訳をどうするかを決めなければならない。103万円の壁、すなわち所得税の課税基準が103万円からになっている理由は、年収2400万円以上を除くすべての給与所得者が一律で受けられる基礎控除額の48万円と、給与所得控除額の最低水準が55万円なので、それを合わせると103万円になるからだ。その壁を178万円まで引き上げる場合、基礎控除額と給与所得控除額のどちらをどれだけ上げるかによって、恩恵を受ける人や税収への影響に大きな違いが出てくる。
国民民主は基礎控除のみ現在の48万円から123万円まで引き上げることで全体を178万円にする案を主張しているが、その場合、高所得者ほど減税額が大きくなる上に、税収が7兆円以上の減収となる。高所得者に減税の対象を拡げてまで税収をそこまで削ることが正当化できるかどうかが問題となる。
是枝氏は、仮にどうしても壁を178万円まで引き上げる必要があるのなら、基礎控除と給与所得控除の両方をバランスよく引き上げるべきだという。その場合、全体としての減税効果は小さくなるが、低所得層、とりわけ働き控えをしている人の手取りは確実に増える。
親の扶養に入っている大学生のアルバイト収入が103万円を超えると、本人が超過分に対して5%の所得税を課されることに加え、親が特定扶養控除を受けられなくなる。特定扶養控除は所得税分と住民税分を合わせると108万円にもなるため、世帯全体で考えた時の節税効果は大きい。逆に見れば、これを失えば、世帯によっては10万円以上の増税となる。大和総研主任研究員の是枝俊悟氏は、この壁をおよそ180万円くらいまで上げることは現実的に可能だという。
年収の壁には103万円の壁以外にも、パートの働き先が大企業の場合は106万円、中小企業の場合は130万円に大きな壁がある。これは配偶者の扶養に入っている第3号被保険者の年収がこの金額を超えると、夫(妻)の扶養から抜けて自身の社会保険料を負担しなければならなくなる。これもその金額を超えた瞬間に手取りの大幅な減少を招くため、壁になっている。同じくアルバイト学生も、年収が130万円に達すると親の扶養を抜けて自身で保険料を支払わなければならなくなる。
しかし、是枝氏は103万円の壁と比べると、106万円の壁や130万円の壁の見直しはすぐには難しいと言う。壁をなくすには、2つの選択肢の中から選ぶ必要がある。1つは、壁の数字を例えば180万円くらいまで上げて、年収がそこに達するまでは社会保険に入らなくてもよいとする道と、逆に基準を50万円くらいまで下げて、誰もが社会保険に入らなければならないようにする道だ。
壁を180万円まで引き上げれば、年収がその金額に達するまでは社会保険料を払わなくて済むので短期的にはありがたく見えるかもしれないが、その人は将来、最低水準の国民年金しか受け取ることができなくなる。その一方で、壁を下げれば、これまで保険料を払わなくてよかった人や会社に、新たな支払いを求めることになるので、それはそれで強い抵抗に遭うことが避けられない。結局のところ、いいとこ取りはできないという話だが、どちらにするにしても国民的な合意形成が必要になるだろう。
現下の物価高で生活苦に喘ぐ人は確実に増えている。何らかの支援は必要だ。しかし、国民民主党が選挙で上手にアピールした「手取りを増やす」、「103万円の壁」といったレトリックに引きずられて、結果的に7兆円規模の恒久減税を行うことの是非やその影響に対しては、慎重な検討が必要だ。例えば、学生アルバイトに関しては、壁を引き上げてもっと働けるようにするのも結構だが、そもそも多くの大学生が学業をそっちのけで毎月10万円ものアルバイト代を稼がなければならない状態を放置していていいのか。内閣府の調査では日本の大学生がアルバイトに費やしている時間は他国と比べても群を抜いているという。ならば103万円の壁を取り払うと同時に、国際的にも低い水準になる教育に対する公的支出を増やすことで学生や学生を持つ親の負担を軽くしたり、学生が学業に専念できるような教育改革なども同時に進めなければ、本末転倒にならないか。
国民民主党が主張する「103万円の壁の見直し」の本質はどこにあるのか、単に壁を引き上げれば問題は解決するのか、働き控えの解消や手取りを増やすためにはどのような政策的選択肢があるのかなどについて、厚労省の社会保障審議会年金部会の委員も務める是枝俊悟氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
後半はこちら→so44328526
(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
<マル激・前半>トランプのカムバックはアメリカと世界をどう変えることになるか/前嶋和弘氏(上智大学総合グローバル学部教授)
4年前の大統領選挙でバイデンに敗れたトランプが、見事なカムバックを果たした。大接戦が予想される中で、現職副大統領のハリスに対し予想以上の大差をつけての文句無しの勝利だった。
トランプの勝因については様々な分析が行われているが、そもそも2024年に行われた先進国の国政選挙では与党がことごとく敗北しており、イギリスを始め多くの国で政権交代や連立の組み換えが行われている。ご多分に漏れず日本も連立与党の総選挙での大敗を経験したばかりだが、いよいよアメリカもその仲間入りをした形となった。
コロナ禍で世界的に3年もの間、経済活動や国民生活が大きく制限される中、各国、とりわけ先進国では政府が未曾有の財政出動を強いられた。その結果、コロナが収束し経済活動が正常化すると、どの国も激しいインフレや物価高に見舞われ、国民の生活が苦しくなっていることが、与党への風当たりを強くしていることは間違いない。さらに世界の穀倉地帯として知られるウクライナで戦争が始まったことで穀物価格やエネルギー価格が高騰したことも、物価の上昇に追い打ちをかけた。
アメリカでは2022年、ガソリン価格がガロンで4ドルを超えた。これを換算すると、現在の日本のガソリン価格の1リットル170円を超える水準だ。日米のガソリン価格が逆転するなどということは、これまでおおよそ考えられないことだった。しかも車社会のアメリカでは多くの人が、燃費を度外視した低燃費の大型車で日本の何十倍もの距離を毎日走っている。さらに食品や住宅価格も高騰しており、日々の国民生活が激しく圧迫される中で、現政権に対する怒りや失望が蔓延するのは避けられないことだった。
しかし、それにしても7つの激戦州のすべてでトランプが勝ち、一般投票の得票数でもトランプがハリスを上回ったことは、アメリカの政治地図に大きな地殻変動が起きていることを示唆している。共和党候補が一般投票で民主党を上回るのは2004年のジョージ・W・ブッシュ以来20年ぶりのこととなる。
今回の選挙では、アメリカ国民が優先課題だと考える4つの論点が、それぞれの候補にくっきりと現れる結果となった。出口調査で「民主主義のあり方」が最優先課題だと答えた人が全体の34%を占め、そう答えた人の80%がハリスに投票したのに対し、「経済」こそが最優先課題だと答えた人も32%にのぼり、その80%はトランプに投票したと答えた。また、その2つに次いで多くの人が懸念を示した「人工妊娠中絶問題」と「移民問題」はそれぞれ前者の74%がハリスに、後者の90%がトランプに投票している。アメリカの分断は更に広がっていることが窺える結果だ。
しかし、投票する際に最も重視した要素として多かったのは「リーダーシップ」と「変革」の2点で、そのいずれもトランプがハリスを圧倒している。ハリス自身の問題に加えて、バイデン政権が物価高に代表される眼下の経済問題に対応できず、また国際的にも強いリーダーシップを発揮できていないとみられたことが、現政権で副大統領を務めるハリスには大きく響いた形となった。
しかし、結局のところ今回の選挙結果もまた、アメリカの分断が更に進んでいることを反映するものとなったと前嶋氏は言う。しかし、その一方で、これまで富裕層や大企業の経営者などを主な支持基盤としてきた共和党の下に白人の貧困層や低学歴層の支持が集まってきたことで、共和党が所得再分配を主張し始めたり、逆に民主党は支持者の多くが富裕層になったことを受けて、減税・規制緩和を主張するようになってきているなど、今回の選挙結果からはアメリカ政治のリアライメント(再編成)が進んでいることも窺える。これが過去4半世紀にわたり分断に明け暮れてきたアメリカ政治の大きな変化につながる可能性があると前嶋氏は指摘する。
ただし、トランプ政権の誕生は、アメリカのみならず世界に大きな影響を与えることは避けられない。トランプ政権が選挙戦中の公約を実行に移せば、自国産業を保護するための関税の引き上げ、とりわけ中国に対する懲罰的関税の導入、地球温暖化会議からの離脱と化石燃料への回帰、ウクライナ支援の停止、そして日本を含む同盟国に対する防衛負担の大幅増額要求など、向こう4年間、世界はトランプ劇場に翻弄されることになるだろう。関税の引き上げと減税によってアメリカのインフレがさらに進み、アメリカが再び利上げに転じれば、一層の円安を含め大きな影響を日本のみならず世界経済に与えることになるだろう。
更にトランプがこれまで自分を刑事訴追したり批判してきた政敵への復讐を誓っている点も気がかりだ。世界が大統領権限の濫用によってアメリカの民主主義が歪められる様を見せられることで、もはやアメリカは民主主義陣営の盟主はおろか、世界から尊敬を受けられる国ではなくなってしまう恐れがある。われわれはパクス・アメリカーナの下でアメリカに依存した現在の世界秩序の崩壊を目の当たりにすることになるかもしれない。
ハリスはなぜ負けたのか。トランプはなぜ強かったのか。トランプ政権の下でアメリカと世界はどう変わるのかなどについて、上智大学総合グローバル学部教授の前嶋和弘氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
後半はこちら→so44304438
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<マル激・後半>トランプのカムバックはアメリカと世界をどう変えることになるか/前嶋和弘氏(上智大学総合グローバル学部教授)
4年前の大統領選挙でバイデンに敗れたトランプが、見事なカムバックを果たした。大接戦が予想される中で、現職副大統領のハリスに対し予想以上の大差をつけての文句無しの勝利だった。
トランプの勝因については様々な分析が行われているが、そもそも2024年に行われた先進国の国政選挙では与党がことごとく敗北しており、イギリスを始め多くの国で政権交代や連立の組み換えが行われている。ご多分に漏れず日本も連立与党の総選挙での大敗を経験したばかりだが、いよいよアメリカもその仲間入りをした形となった。
コロナ禍で世界的に3年もの間、経済活動や国民生活が大きく制限される中、各国、とりわけ先進国では政府が未曾有の財政出動を強いられた。その結果、コロナが収束し経済活動が正常化すると、どの国も激しいインフレや物価高に見舞われ、国民の生活が苦しくなっていることが、与党への風当たりを強くしていることは間違いない。さらに世界の穀倉地帯として知られるウクライナで戦争が始まったことで穀物価格やエネルギー価格が高騰したことも、物価の上昇に追い打ちをかけた。
アメリカでは2022年、ガソリン価格がガロンで4ドルを超えた。これを換算すると、現在の日本のガソリン価格の1リットル170円を超える水準だ。日米のガソリン価格が逆転するなどということは、これまでおおよそ考えられないことだった。しかも車社会のアメリカでは多くの人が、燃費を度外視した低燃費の大型車で日本の何十倍もの距離を毎日走っている。さらに食品や住宅価格も高騰しており、日々の国民生活が激しく圧迫される中で、現政権に対する怒りや失望が蔓延するのは避けられないことだった。
しかし、それにしても7つの激戦州のすべてでトランプが勝ち、一般投票の得票数でもトランプがハリスを上回ったことは、アメリカの政治地図に大きな地殻変動が起きていることを示唆している。共和党候補が一般投票で民主党を上回るのは2004年のジョージ・W・ブッシュ以来20年ぶりのこととなる。
今回の選挙では、アメリカ国民が優先課題だと考える4つの論点が、それぞれの候補にくっきりと現れる結果となった。出口調査で「民主主義のあり方」が最優先課題だと答えた人が全体の34%を占め、そう答えた人の80%がハリスに投票したのに対し、「経済」こそが最優先課題だと答えた人も32%にのぼり、その80%はトランプに投票したと答えた。また、その2つに次いで多くの人が懸念を示した「人工妊娠中絶問題」と「移民問題」はそれぞれ前者の74%がハリスに、後者の90%がトランプに投票している。アメリカの分断は更に広がっていることが窺える結果だ。
しかし、投票する際に最も重視した要素として多かったのは「リーダーシップ」と「変革」の2点で、そのいずれもトランプがハリスを圧倒している。ハリス自身の問題に加えて、バイデン政権が物価高に代表される眼下の経済問題に対応できず、また国際的にも強いリーダーシップを発揮できていないとみられたことが、現政権で副大統領を務めるハリスには大きく響いた形となった。
しかし、結局のところ今回の選挙結果もまた、アメリカの分断が更に進んでいることを反映するものとなったと前嶋氏は言う。しかし、その一方で、これまで富裕層や大企業の経営者などを主な支持基盤としてきた共和党の下に白人の貧困層や低学歴層の支持が集まってきたことで、共和党が所得再分配を主張し始めたり、逆に民主党は支持者の多くが富裕層になったことを受けて、減税・規制緩和を主張するようになってきているなど、今回の選挙結果からはアメリカ政治のリアライメント(再編成)が進んでいることも窺える。これが過去4半世紀にわたり分断に明け暮れてきたアメリカ政治の大きな変化につながる可能性があると前嶋氏は指摘する。
ただし、トランプ政権の誕生は、アメリカのみならず世界に大きな影響を与えることは避けられない。トランプ政権が選挙戦中の公約を実行に移せば、自国産業を保護するための関税の引き上げ、とりわけ中国に対する懲罰的関税の導入、地球温暖化会議からの離脱と化石燃料への回帰、ウクライナ支援の停止、そして日本を含む同盟国に対する防衛負担の大幅増額要求など、向こう4年間、世界はトランプ劇場に翻弄されることになるだろう。関税の引き上げと減税によってアメリカのインフレがさらに進み、アメリカが再び利上げに転じれば、一層の円安を含め大きな影響を日本のみならず世界経済に与えることになるだろう。
更にトランプがこれまで自分を刑事訴追したり批判してきた政敵への復讐を誓っている点も気がかりだ。世界が大統領権限の濫用によってアメリカの民主主義が歪められる様を見せられることで、もはやアメリカは民主主義陣営の盟主はおろか、世界から尊敬を受けられる国ではなくなってしまう恐れがある。われわれはパクス・アメリカーナの下でアメリカに依存した現在の世界秩序の崩壊を目の当たりにすることになるかもしれない。
ハリスはなぜ負けたのか。トランプはなぜ強かったのか。トランプ政権の下でアメリカと世界はどう変わるのかなどについて、上智大学総合グローバル学部教授の前嶋和弘氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
前半はこちら→so44304706
(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
<マル激・後半>司法問題を総選挙の争点にしなくてどうする/伊藤真氏(弁護士)
衆議院選挙が明日に迫った。
マル激では総選挙と同時に行われる最高裁判所の国民審査に際して、有権者に必要な判断材料が提供されていないとの考えの下で、毎回、審査対象となる最高裁裁判官がこれまでどのような事件に関わり、どのような判断を示してきたのかを提供してきた。最高裁判所の国民審査が、一般国民が裁判所に対して何らかの意思表示を行うことができる事実上唯一の手段になっているからだ。
しかし、最高裁国民審査には本質的な問題がある。それは審査対象となる裁判官が前回の国民審査、つまり総選挙以降に任命された新任の裁判官に限るということだ。審査対象となる裁判官はいずれも任官後3年以下であり、中には数カ月しか裁判官を務めていない人もいる。それを審査しろというのはもともと無理な話なのだ。
しかも、最高裁の裁判官は一度審査を受けると次は10年後まで審査を受けない。裁判官の任官時の年齢がほぼ全員60代であり、最高裁裁判官の定年が70歳であることから、2度審査を受けることになる裁判官は事実上存在しない。つまり、国民審査というのは名ばかりで、最高裁の裁判官として重要な決定を下した経験のない、つまりこれまでの経歴以外にほとんど判断する材料が何もない、任官したての裁判官を信任するか不信任とするかを決めるしかない制度なのだ。これは形骸化以前の、制度の根本的な欠陥と言わなければならない。改善すべき点は簡単で、10年に1回などというルールを撤廃し、毎年15人全員を審査対象にすればいいだけのことだ。日本の司法が国民の信任を得るためにも、制度の改善が待たれる。そして、それは法律を作る国会の仕事ということになる。
今回のマル激では国民審査の対象となる最高裁裁判官の限られた数の判決記録を掘り起こすとともに、弁護士の伊藤真氏をゲストに招き、司法問題全般についても議論した。なぜならば、昨今、国際的にも国内的にも現在の日本が抱える最も深刻な問題と考えるべき司法の問題が、明日迎える総選挙ではほとんど各党の公約に取り上げられてさえいないからだ。58年ぶりに再審無罪となった袴田事件の判決では警察と検察による証拠の捏造が厳しく断罪されている。また、大川原化工機の冤罪事件や高裁で再審決定が出された福井女子生徒殺人事件では、いずれも警察や検察による事実上の事件のでっち上げや被疑者に有利な重要な証拠の隠蔽などが指摘されている。今回の総選挙は日本の刑事司法の病理がいやというほど噴き出すさなかに行われている国政選挙なのだ。
言うまでもなく長期の勾留と弁護士の立ち合いが認められない過酷な取り調べに加え、メディアにあることないこと情報を非公式に漏らして報じさせるリーク報道によって被疑者を自白に追い詰めていく日本の人質司法は、国連の人権委員会や拷問禁止小委員会などでも繰り返し問題視されてきている。
にもかかわらず、今回の総選挙では司法問題、とりわけ目に余る警察の権力の濫用や冤罪連発の原因となっている検察による自分たちには不都合な証拠隠し、そしていたずらにハードルが高い再審法の改正が、議論の遡上にさえあがっていない。
伊藤弁護士は、司法の問題が政治的争点にならないのは、票にならないからだろうと指摘する。
これは日本人の正義観や民度にも直結する問題になってしまうが、まだ日本人の多くが「100人の罪びとを放免しようとも1人の無辜の民を刑することなかれ」の意味、つまりなぜ推定無罪が民主政の要諦なのかを十分に理解できていないということなのかもしれない。しかし、それを認めてしまっては、日本という国では正義が貫徹されていないことを認めることになってしまう。
国民の側から警察や検察の暴走を制御しろという強い要請があるわけでもなく、かといって司法の問題に真剣に取り組んでも票や金になるわけでもない。しかも、既存のメディアもその司法体制の一翼を担っているため、それを批判することはメディアを敵に回すことにもなってしまう。政治と金とか景気のようなわかりやすいテーマがいくらでもあるときに、そんな面倒くさいテーマをわざわざ取り上げようという奇特な政治家や政党はほとんどいないというのが、現在の日本の現状なのだ。
袴田事件の無罪判決を受けて畝本直美検事総長は10月8日、控訴を断念する談話を発表したが、その談話の大半は無罪判決に対する批判や不満の表明に費やされているという驚くべき内容になっていた。伊藤氏は、間違いを犯さないことが国民への信頼につながると検察が勘違いしていることが問題だという。捜査機関による証拠の捏造などあってはならないことだが、実際に起こってきた以上は、証拠がないのに有罪とされる人が出てきてしまう。そうなった時に、人権を守るための再審が速やかに開始されるように整備されなくてはならない。
法の番人としての最高の権力の地位にあり、人権の最後の砦でもある最高裁の裁判官の審査は、そうした状況の下で行われることになる。
国民審査では辞めさせたい裁判官がいれば投票用紙に「×」を書くが、そもそも空欄で提出すれば「信任した」とみなされてしまう。情報がないため誰に×をつければいいかわかないから全部を空欄で出せば、信任、つまり今の最高裁は本当によくやってくれているという意思表示をしたことになってしまうのだ。
今回審査の対象となる6人の中には最高裁判事としての実績がほとんどない人もいるので、今回のマル激では少し対象を広げて、前回の総選挙以降に最高裁が判決や決定を下した重要な事件を取り上げ、その中で今回の審査対象となった裁判官の判断内容を同時にチェックした。
判決としては今回は以下のものを取り上げた。
・名張毒ぶどう酒事件再審請求事件
・1票の格差を放置したままの選挙の無効を訴える訴訟2件(伊藤氏が代理人を務める)
・経産省のトランスジェンダー女性にトイレの利用制限を科したことの是非を争う裁判
・『宮本から君へ』で出演者の1人が薬物事件で逮捕起訴されたことを理由に助成金を取り消したことの是非を争う事件
・沖縄県の意思に反して国が辺野古の基地建設のための埋め立て許可を代執行したことの是非を争う訴訟
・犯罪の犠牲になった同性パートナーに犯罪被害者給付金を給付するかどうかをめぐる裁判
・旧優生保護法下で不妊手術などを強制された被害者に対する補償に除籍期間を適用することの是非を争う裁判
・性同一性障害の人が性別を変更するための手術要件が違憲かどうかをめぐる裁判
日本が抱えている司法の問題とは何か、なぜこれだけ問題を抱えていながら、政治は一向に動こうとしないのか、冤罪をなくすために何が必要なのか、最高裁国民審査のポイントなどについて、弁護士の伊藤真氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
前半はこちら→so44255344
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<マル激・前半>司法問題を総選挙の争点にしなくてどうする/伊藤真氏(弁護士)
衆議院選挙が明日に迫った。
マル激では総選挙と同時に行われる最高裁判所の国民審査に際して、有権者に必要な判断材料が提供されていないとの考えの下で、毎回、審査対象となる最高裁裁判官がこれまでどのような事件に関わり、どのような判断を示してきたのかを提供してきた。最高裁判所の国民審査が、一般国民が裁判所に対して何らかの意思表示を行うことができる事実上唯一の手段になっているからだ。
しかし、最高裁国民審査には本質的な問題がある。それは審査対象となる裁判官が前回の国民審査、つまり総選挙以降に任命された新任の裁判官に限るということだ。審査対象となる裁判官はいずれも任官後3年以下であり、中には数カ月しか裁判官を務めていない人もいる。それを審査しろというのはもともと無理な話なのだ。
しかも、最高裁の裁判官は一度審査を受けると次は10年後まで審査を受けない。裁判官の任官時の年齢がほぼ全員60代であり、最高裁裁判官の定年が70歳であることから、2度審査を受けることになる裁判官は事実上存在しない。つまり、国民審査というのは名ばかりで、最高裁の裁判官として重要な決定を下した経験のない、つまりこれまでの経歴以外にほとんど判断する材料が何もない、任官したての裁判官を信任するか不信任とするかを決めるしかない制度なのだ。これは形骸化以前の、制度の根本的な欠陥と言わなければならない。改善すべき点は簡単で、10年に1回などというルールを撤廃し、毎年15人全員を審査対象にすればいいだけのことだ。日本の司法が国民の信任を得るためにも、制度の改善が待たれる。そして、それは法律を作る国会の仕事ということになる。
今回のマル激では国民審査の対象となる最高裁裁判官の限られた数の判決記録を掘り起こすとともに、弁護士の伊藤真氏をゲストに招き、司法問題全般についても議論した。なぜならば、昨今、国際的にも国内的にも現在の日本が抱える最も深刻な問題と考えるべき司法の問題が、明日迎える総選挙ではほとんど各党の公約に取り上げられてさえいないからだ。58年ぶりに再審無罪となった袴田事件の判決では警察と検察による証拠の捏造が厳しく断罪されている。また、大川原化工機の冤罪事件や高裁で再審決定が出された福井女子生徒殺人事件では、いずれも警察や検察による事実上の事件のでっち上げや被疑者に有利な重要な証拠の隠蔽などが指摘されている。今回の総選挙は日本の刑事司法の病理がいやというほど噴き出すさなかに行われている国政選挙なのだ。
言うまでもなく長期の勾留と弁護士の立ち合いが認められない過酷な取り調べに加え、メディアにあることないこと情報を非公式に漏らして報じさせるリーク報道によって被疑者を自白に追い詰めていく日本の人質司法は、国連の人権委員会や拷問禁止小委員会などでも繰り返し問題視されてきている。
にもかかわらず、今回の総選挙では司法問題、とりわけ目に余る警察の権力の濫用や冤罪連発の原因となっている検察による自分たちには不都合な証拠隠し、そしていたずらにハードルが高い再審法の改正が、議論の遡上にさえあがっていない。
伊藤弁護士は、司法の問題が政治的争点にならないのは、票にならないからだろうと指摘する。
これは日本人の正義観や民度にも直結する問題になってしまうが、まだ日本人の多くが「100人の罪びとを放免しようとも1人の無辜の民を刑することなかれ」の意味、つまりなぜ推定無罪が民主政の要諦なのかを十分に理解できていないということなのかもしれない。しかし、それを認めてしまっては、日本という国では正義が貫徹されていないことを認めることになってしまう。
国民の側から警察や検察の暴走を制御しろという強い要請があるわけでもなく、かといって司法の問題に真剣に取り組んでも票や金になるわけでもない。しかも、既存のメディアもその司法体制の一翼を担っているため、それを批判することはメディアを敵に回すことにもなってしまう。政治と金とか景気のようなわかりやすいテーマがいくらでもあるときに、そんな面倒くさいテーマをわざわざ取り上げようという奇特な政治家や政党はほとんどいないというのが、現在の日本の現状なのだ。
袴田事件の無罪判決を受けて畝本直美検事総長は10月8日、控訴を断念する談話を発表したが、その談話の大半は無罪判決に対する批判や不満の表明に費やされているという驚くべき内容になっていた。伊藤氏は、間違いを犯さないことが国民への信頼につながると検察が勘違いしていることが問題だという。捜査機関による証拠の捏造などあってはならないことだが、実際に起こってきた以上は、証拠がないのに有罪とされる人が出てきてしまう。そうなった時に、人権を守るための再審が速やかに開始されるように整備されなくてはならない。
法の番人としての最高の権力の地位にあり、人権の最後の砦でもある最高裁の裁判官の審査は、そうした状況の下で行われることになる。
国民審査では辞めさせたい裁判官がいれば投票用紙に「×」を書くが、そもそも空欄で提出すれば「信任した」とみなされてしまう。情報がないため誰に×をつければいいかわかないから全部を空欄で出せば、信任、つまり今の最高裁は本当によくやってくれているという意思表示をしたことになってしまうのだ。
今回審査の対象となる6人の中には最高裁判事としての実績がほとんどない人もいるので、今回のマル激では少し対象を広げて、前回の総選挙以降に最高裁が判決や決定を下した重要な事件を取り上げ、その中で今回の審査対象となった裁判官の判断内容を同時にチェックした。
判決としては今回は以下のものを取り上げた。
・名張毒ぶどう酒事件再審請求事件
・1票の格差を放置したままの選挙の無効を訴える訴訟2件(伊藤氏が代理人を務める)
・経産省のトランスジェンダー女性にトイレの利用制限を科したことの是非を争う裁判
・『宮本から君へ』で出演者の1人が薬物事件で逮捕起訴されたことを理由に助成金を取り消したことの是非を争う事件
・沖縄県の意思に反して国が辺野古の基地建設のための埋め立て許可を代執行したことの是非を争う訴訟
・犯罪の犠牲になった同性パートナーに犯罪被害者給付金を給付するかどうかをめぐる裁判
・旧優生保護法下で不妊手術などを強制された被害者に対する補償に除籍期間を適用することの是非を争う裁判
・性同一性障害の人が性別を変更するための手術要件が違憲かどうかをめぐる裁判
日本が抱えている司法の問題とは何か、なぜこれだけ問題を抱えていながら、政治は一向に動こうとしないのか、冤罪をなくすために何が必要なのか、最高裁国民審査のポイントなどについて、弁護士の伊藤真氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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【後半会員限定パート】戸谷洋志氏出演!「『本当の恋愛』とは何か? 恋愛を哲学する」(2024年6月27日放送)
戸谷洋志氏出演!「『本当の恋愛』とは何か? 恋愛を哲学する」
▼参考テキスト
『恋愛の哲学』戸谷洋志 著、晶文社、1760円(税込)
https://www.shobunsha.co.jp/?p=8026
▼番組資料を深掘TV公式Xでアップしています
https://x.com/FukaboriTV/status/1808393809182839056
※チャンネル管理者より
…番組内でも言及しておりますが司会のジョー横溝が喘息を発症し、通院と投薬で治療を行っております。出演者には番組開始前にその旨はお伝えしておりますが、ご視聴の皆さんにお聞き苦しい点がありましたこと、お詫び申し上げます。
【番組について】
●6月27日(木)21時から生配信
●ゲスト:戸谷洋志(哲学者)
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
#深掘TV #宮台真司 #ダースレイダー #ジョー横溝
【前半無料パート】戸谷洋志氏出演!「『本当の恋愛』とは何か? 恋愛を哲学する」(2024年6月27日放送)
戸谷洋志氏出演!「『本当の恋愛』とは何か? 恋愛を哲学する」
▼参考テキスト
『恋愛の哲学』戸谷洋志 著、晶文社、1760円(税込)
https://www.shobunsha.co.jp/?p=8026
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※チャンネル管理者より
…番組内でも言及しておりますが司会のジョー横溝が喘息を発症し、通院と投薬で治療を行っております。出演者には番組開始前にその旨はお伝えしておりますが、ご視聴の皆さんにお聞き苦しい点がありましたこと、お詫び申し上げます。
●6月27日(木)21時から生配信
●ゲスト:戸谷洋志(哲学者)
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
<マル激・前半>トラウマを乗り越えることの難しさを社会は理解できていない/伊東ゆたか氏(児童精神科医)
故ジャニー喜多川氏(本名・喜多川擴=2019年7月9日死去)の性加害問題について、ジャニーズ事務所が事実を認めて謝罪をしてから1年余りが過ぎた。
10月15日、ジャニーズ事務所の後継会社であるスマイルアップは、ホームページ上で500人余りに補償金を支払ったことを公表した。それを受け、翌16日にはNHK会長が記者会見で「(ジャニーズ事務所を引き継いだ)スタートエンターテイメント所属のタレントへの出演依頼を可能とする」と発言するなど、業界全体で事態の幕引きを図ろうとしているのが透けて見える。
しかし、問題は解決しているわけではない。
故人とはいえ、500人を超える未成年者に対して行われた性加害は、簡単に忘れ去られてよいものではない。この数字も、あくまで事務所が認めたものであり、実際にどれほどの被害者がいるのかも定かではない。性犯罪とも言える行為の検証も行われないままの幕引きを許してしまう社会の在り方自体が、性加害が繰り返される温床となる。
これに先立ち10月9日には被害当事者が記者会見を行い、トラウマを抱えながら何とか生き延びてきたこの1年について語った。会見では誹謗中傷に晒された上に、旧ジャニーズ事務所の心ない対応に傷つけられ、命を失った仲間や日本で暮らすことを断念し海外に移住した仲間のことが紹介された。傷つけられるのを覚悟の上で、被害者自身が被害を訴え出ることによってしか問題解決の糸口が見つけられない現在の日本の実態が、重い課題として社会に突きつけられている。
子どものトラウマに向き合ってきた児童精神科医の伊東ゆたか氏は、トラウマを生き延びたトラウマサバイバーたちに向けられる社会の眼差しがとても重要になると語る。トラウマからの回復には時間がかかる。トラウマを抱えながらも今まで生きてこられたのは本人にはその能力があったからだと理解し、トラウマからの回復は可能だという前向きな姿勢を持つことが大切になる。被害者に対する誹謗中傷など、とんでもないことだ。
臨床の現場では、トラウマ・インフォームド・ケアという考えが導入されていると伊東氏は言う。ケアを受ける本人も、支援者も、まずトラウマを意識することが重要になる。これは「トラウマのメガネ」という言い方もされている。児童相談所などの現場では、性被害も含めさまざまな小児期の逆境体験をしている子どもたちを支援する枠組みとして、生活環境からの様々なアプローチの方法も試みられているという。
トラウマに対する理解が圧倒的に不足しているなかで、性被害を含めたトラウマをどうしたら乗り越えられるのか。今もトラウマを抱える子どもたちと向き合っている伊東ゆたか氏と、社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が議論した。
後半はこちら→so44231341
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<マル激・後半>トラウマを乗り越えることの難しさを社会は理解できていない/伊東ゆたか氏(児童精神科医)
故ジャニー喜多川氏(本名・喜多川擴=2019年7月9日死去)の性加害問題について、ジャニーズ事務所が事実を認めて謝罪をしてから1年余りが過ぎた。
10月15日、ジャニーズ事務所の後継会社であるスマイルアップは、ホームページ上で500人余りに補償金を支払ったことを公表した。それを受け、翌16日にはNHK会長が記者会見で「(ジャニーズ事務所を引き継いだ)スタートエンターテイメント所属のタレントへの出演依頼を可能とする」と発言するなど、業界全体で事態の幕引きを図ろうとしているのが透けて見える。
しかし、問題は解決しているわけではない。
故人とはいえ、500人を超える未成年者に対して行われた性加害は、簡単に忘れ去られてよいものではない。この数字も、あくまで事務所が認めたものであり、実際にどれほどの被害者がいるのかも定かではない。性犯罪とも言える行為の検証も行われないままの幕引きを許してしまう社会の在り方自体が、性加害が繰り返される温床となる。
これに先立ち10月9日には被害当事者が記者会見を行い、トラウマを抱えながら何とか生き延びてきたこの1年について語った。会見では誹謗中傷に晒された上に、旧ジャニーズ事務所の心ない対応に傷つけられ、命を失った仲間や日本で暮らすことを断念し海外に移住した仲間のことが紹介された。傷つけられるのを覚悟の上で、被害者自身が被害を訴え出ることによってしか問題解決の糸口が見つけられない現在の日本の実態が、重い課題として社会に突きつけられている。
子どものトラウマに向き合ってきた児童精神科医の伊東ゆたか氏は、トラウマを生き延びたトラウマサバイバーたちに向けられる社会の眼差しがとても重要になると語る。トラウマからの回復には時間がかかる。トラウマを抱えながらも今まで生きてこられたのは本人にはその能力があったからだと理解し、トラウマからの回復は可能だという前向きな姿勢を持つことが大切になる。被害者に対する誹謗中傷など、とんでもないことだ。
臨床の現場では、トラウマ・インフォームド・ケアという考えが導入されていると伊東氏は言う。ケアを受ける本人も、支援者も、まずトラウマを意識することが重要になる。これは「トラウマのメガネ」という言い方もされている。児童相談所などの現場では、性被害も含めさまざまな小児期の逆境体験をしている子どもたちを支援する枠組みとして、生活環境からの様々なアプローチの方法も試みられているという。
トラウマに対する理解が圧倒的に不足しているなかで、性被害を含めたトラウマをどうしたら乗り越えられるのか。今もトラウマを抱える子どもたちと向き合っている伊東ゆたか氏と、社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が議論した。
前半はこちら→so44231423
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<マル激・後半>なぜ今これまでにないほど核戦争の脅威が高まっているのか/高原孝生氏(明治学院大学国際平和研究所客員所員)
被爆者の立場から核兵器廃絶を訴えてきた日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)が10月11日、ノーベル平和賞を受賞した。
今回、核兵器廃絶を訴えてきた被団協がノーベル平和賞を受賞したことの背景には、今まさに世界でこれまでにないほど核の脅威が高まっていることが指摘できる。ウクライナに侵攻したロシアは、プーチン大統領がアメリカを始めとするNATOのウクライナ支援国に対して核の脅しととれる発言を繰り返している。北朝鮮も10月7日に金正恩総書記が「敵が武力行使を企てれば核兵器の使用も排除しない」と述べている。紛争が続くパレスチナ地域ではイスラエル政府の極右閣僚が昨年、ガザへの核兵器使用も選択肢にあるなどと発言している。国際政治の表舞台でここまで露骨に核による威嚇が語られることは、いまだかつてなかったことだ。
そうした中でロシアのプーチン大統領は9月25日、核兵器の役割や使用する条件を定めた「核ドクトリン」の内容を変更する方針を発表した。新方針の下では非核保有国による攻撃でも核保有国の支援を受けていれば共同攻撃と見做すとしている。明らかにアメリカの支援を受けたウクライナを念頭に置いた方針変更で、これが正式決定されればロシアによる核兵器使用のハードルが大きく下がる恐れがある。特に近年、米ロが互いを直接攻撃できるような強力な「戦略核」に対し、あえて破壊力を抑えた「戦術核」の開発が進み、実際に使用される懸念が広がっている。破壊力を抑えたといっても、広島に投下された原爆と同等の殺傷力を持っており、核兵器である以上、従来の兵器とは破壊力という点でも非人道性という点でも明らかに次元が異なることは忘れてはならない。
1945年に広島、長崎に原爆が投下されて以降、核兵器は一度も使われずに来た。なぜこれまで核戦争にならなかったかというと、互いに核兵器を保有することによって核兵器が使えなくなるという「核抑止」が機能してきたからだという考え方がある。しかし、明治学院大学国際平和研究所客員所員で平和研究の第一人者の高原孝生氏は、核戦争が起こらずにここまで来たのは、その場にいた個々の人間がたまたま「正しい判断」を下した結果であり、核抑止を過信してはならないと警鐘を鳴らす。
実際はそこでいう「正しい判断」というのも、個々人が核戦争だけは避けなければならないという強い思いから、ルールに反した行動を取ったことが、核兵器使用の回避につながったというのが現実だった。規定のルールに従っていれば、何度も核戦争が起きていても不思議はなかったということだ。
例えば1983年、アメリカの核ミサイル攻撃を探知するソ連の早期警戒システムが誤作動する事件があった。当直で勤務していたペトロフ中佐は、アメリカが核ミサイルを発射した場合は、共産党の首脳部に即座に報告しなければならない立場に置かれていたが、ミサイルの数が少なすぎることからシステムの誤作動の可能性を疑い、規則に反して報告をしないままミサイルの着弾予想時間が過ぎるのを待った。もし中佐が規則通りに報告していれば、直ちにソ連から報復の核攻撃が行われ、全面核戦争に発展していた可能性が十分にあった。それ以外にも、核攻撃を想定した西側の訓練をソ連側が本物と誤認識して、間一髪で核戦争に発展しかけたこともあった。
互いに核兵器を保有することで核を使えなくするという相互確証破壊(MAD)の理論は、一見合理的に見える。しかし高原氏は、相互確証破壊などの核戦略はアメリカとロシアという1対1の世界しか想定していないところに問題があると指摘する。米ソが圧倒的な核戦力を独占していた時代とは異なり、今や核兵器は9か国が保有するようになっている。その中にはパキスタン、インドのように恒常的な紛争を抱える国もある。北朝鮮は金正恩総書記の意向次第で、何が起きてもおかしくない国だ。警報の誤作動や相互不信なども含め、一歩間違えばいつ核兵器が使用されてもおかしくない状態に世界は陥ってしまっている。核の抑止論では核兵器の使用を抑えられないと高原氏は言う。
そのような状況の下で唯一の戦争被爆国である日本は何ができるのか、核には核でやり返すしかないという発想を転換するためには何が必要なのかなどについて、核軍縮が専門で明治学院大学国際平和研究所客員所員の高原孝生氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
(※概要に不正確な記述がありましたので、訂正しました。ここにお詫び申し上げます。2024年10月16日18時)
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<マル激・前半>なぜ今これまでにないほど核戦争の脅威が高まっているのか/高原孝生氏(明治学院大学国際平和研究所客員所員)
被爆者の立場から核兵器廃絶を訴えてきた日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)が10月11日、ノーベル平和賞を受賞した。
今回、核兵器廃絶を訴えてきた被団協がノーベル平和賞を受賞したことの背景には、今まさに世界でこれまでにないほど核の脅威が高まっていることが指摘できる。ウクライナに侵攻したロシアは、プーチン大統領がアメリカを始めとするNATOのウクライナ支援国に対して核の脅しととれる発言を繰り返している。北朝鮮も10月7日に金正恩総書記が「敵が武力行使を企てれば核兵器の使用も排除しない」と述べている。紛争が続くパレスチナ地域ではイスラエル政府の極右閣僚が昨年、ガザへの核兵器使用も選択肢にあるなどと発言している。国際政治の表舞台でここまで露骨に核による威嚇が語られることは、いまだかつてなかったことだ。
そうした中でロシアのプーチン大統領は9月25日、核兵器の役割や使用する条件を定めた「核ドクトリン」の内容を変更する方針を発表した。新方針の下では非核保有国による攻撃でも核保有国の支援を受けていれば共同攻撃と見做すとしている。明らかにアメリカの支援を受けたウクライナを念頭に置いた方針変更で、これが正式決定されればロシアによる核兵器使用のハードルが大きく下がる恐れがある。特に近年、米ロが互いを直接攻撃できるような強力な「戦略核」に対し、あえて破壊力を抑えた「戦術核」の開発が進み、実際に使用される懸念が広がっている。破壊力を抑えたといっても、広島に投下された原爆と同等の殺傷力を持っており、核兵器である以上、従来の兵器とは破壊力という点でも非人道性という点でも明らかに次元が異なることは忘れてはならない。
1945年に広島、長崎に原爆が投下されて以降、核兵器は一度も使われずに来た。なぜこれまで核戦争にならなかったかというと、互いに核兵器を保有することによって核兵器が使えなくなるという「核抑止」が機能してきたからだという考え方がある。しかし、明治学院大学国際平和研究所客員所員で平和研究の第一人者の高原孝生氏は、核戦争が起こらずにここまで来たのは、その場にいた個々の人間がたまたま「正しい判断」を下した結果であり、核抑止を過信してはならないと警鐘を鳴らす。
実際はそこでいう「正しい判断」というのも、個々人が核戦争だけは避けなければならないという強い思いから、ルールに反した行動を取ったことが、核兵器使用の回避につながったというのが現実だった。規定のルールに従っていれば、何度も核戦争が起きていても不思議はなかったということだ。
例えば1983年、アメリカの核ミサイル攻撃を探知するソ連の早期警戒システムが誤作動する事件があった。当直で勤務していたペトロフ中佐は、アメリカが核ミサイルを発射した場合は、共産党の首脳部に即座に報告しなければならない立場に置かれていたが、ミサイルの数が少なすぎることからシステムの誤作動の可能性を疑い、規則に反して報告をしないままミサイルの着弾予想時間が過ぎるのを待った。もし中佐が規則通りに報告していれば、直ちにソ連から報復の核攻撃が行われ、全面核戦争に発展していた可能性が十分にあった。それ以外にも、核攻撃を想定した西側の訓練をソ連側が本物と誤認識して、間一髪で核戦争に発展しかけたこともあった。
互いに核兵器を保有することで核を使えなくするという相互確証破壊(MAD)の理論は、一見合理的に見える。しかし高原氏は、相互確証破壊などの核戦略はアメリカとロシアという1対1の世界しか想定していないところに問題があると指摘する。米ソが圧倒的な核戦力を独占していた時代とは異なり、今や核兵器は9か国が保有するようになっている。その中にはパキスタン、インドのように恒常的な紛争を抱える国もある。北朝鮮は金正恩総書記の意向次第で、何が起きてもおかしくない国だ。警報の誤作動や相互不信なども含め、一歩間違えばいつ核兵器が使用されてもおかしくない状態に世界は陥ってしまっている。核の抑止論では核兵器の使用を抑えられないと高原氏は言う。
そのような状況の下で唯一の戦争被爆国である日本は何ができるのか、核には核でやり返すしかないという発想を転換するためには何が必要なのかなどについて、核軍縮が専門で明治学院大学国際平和研究所客員所員の高原孝生氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
(※概要に不正確な記述がありましたので、訂正しました。ここにお詫び申し上げます。2024年10月16日18時)
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<マル激・後半>極右勢力に牛耳られたイスラエルはもはや誰も止められないのか/臼杵陽氏(日本女子大学文学部教授)
イスラエルが10月1日、遂にレバノンへの地上侵攻を始めた。それを受けて、レバノンを支援するイランはイスラエルに向けて180発以上の弾道ミサイルを発射した。イスラエルはすでにイランへの反撃を明言しており、戦火のさらなる拡大が避けられない状況となっている。
ハマスによるイスラエルへの奇襲に端を発する両者の軍事衝突は、ほぼ一方的なイスラエルの侵攻という形で進み、10月7日で1年を迎える。ガザの死者が4万人、しかもその大半は子どもを含む一般市民という状況の中、国際社会からの度重なる停戦要求も実らず、残念ながら当分の間イスラエルの攻撃は続くものと見られ、犠牲者の数も増え続けることが避けられない状況だ。
それにしてもイスラエルは、どれだけ世界から指弾されてもガザへの攻撃をやめないどころか、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラやイエメンのフーシ派など、多方面に戦線を拡大している。そして、1日のイランによるミサイル攻撃で、遂にイランまでがイスラエルと限定的とは言え、戦争状態に突入しようとしている。
イスラエルの先進技術と軍事力、そしてアメリカからの軍事支援が当面は続くと予想されることから、仮にイランと戦火を交えることになったとしてもイスラエルの軍事的な優位性は揺るがないと考えられている。しかし、もはやイスラエルの最大の敵は国外の反イスラエル勢力ではなく、イスラエルが国内に抱えた極右勢力であることがイスラエルにとっては国家存亡に関わる最大のリスクファクターになっているとの指摘が出始めている。
なぜイスラエルは世界から指弾を受けてもガザ攻撃を続け、遂にはレバノンやイエメン、そしてイランにまで戦火を拡大しなければならないのか。日本女子大学文学部教授でイスラエル・パレスチナ研究の第一人者の臼杵陽氏は、イスラエル国内の政治状況にその原因があると指摘する。ネタニヤフ政権は内政的に不安定な状況にあり、政権を延命するために国内の目を外に向けようと戦争を継続している面があるのだと言う。
1院制の議会を比例代表方式で選出しているイスラエルでは、政府は1948年の建国以来、常に連立政権で成り立ってきた。様々な背景を持ったユダヤ人やアラブ人が集まって20世紀にいわば人為的に国家を建設したイスラエルは、完全比例選挙では多数の少数政党が生まれやすく、宗教政党や極右政党も議席を得やすい構造になっている。
ネタニヤフ首相が率いる「リクード」は世俗的右派に属するが、120の議席があるイスラエル国会では32議席しか持っていない。結果的にネタニヤフ政権は宗教政党の「シャス」、「統一トーラー・ユダヤ連合」や、極右政党の「宗教シオニズム」、「ユダヤの力」などと連立し、68議席の右派連合を作っている。仮に宗教政党や極右政党が政権から離脱してしまえば、右派連合は過半数を維持できなくなる恐れがある。
ネタニヤフ首相が率いるリクード自体が元来、思想的には保守であり、ユダヤ民族主義を強調する傾向があるが、それ以上に連立のパートナーを組む「宗教シオニズム」と「ユダヤの力」の2つの極右勢力が、パレスチナの入植拡大を叫ぶなどナショナリズムを煽る政策を強く主張し、保守的なネタニヤフ政権を更に右に引っ張っている。実際に今年6月にも、ハマスと停戦合意すれば連立を離脱すると脅しをかけるなどして、和平プロセスの妨げとなっている。いわば、2つの少数政党が政権のキャスティングボートを握ることで政権を操る事態に陥っているのだ。
しかし、例え軍事的な優位性があるとはいえ、イスラエルもいつまでも戦火を拡大しているわけにもいかない。イスラエル経済にも重圧となっていることに加え、このままではイスラエルの国際的な立場は悪くなる一方だ。また、イスラエル国内にも反戦運動や厭戦機運が出始めているという。
中東でなぜ戦火が拡大しているのか、なぜイスラエルはガザから撤退できないのか、原油の94%を中東諸国に依存している日本への影響はないのかなどについて、日本女子大学文学部教授の臼杵陽氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
前半はこちら→so44180984
(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
<マル激・前半>極右勢力に牛耳られたイスラエルはもはや誰も止められないのか/臼杵陽氏(日本女子大学文学部教授)
イスラエルが10月1日、遂にレバノンへの地上侵攻を始めた。それを受けて、レバノンを支援するイランはイスラエルに向けて180発以上の弾道ミサイルを発射した。イスラエルはすでにイランへの反撃を明言しており、戦火のさらなる拡大が避けられない状況となっている。
ハマスによるイスラエルへの奇襲に端を発する両者の軍事衝突は、ほぼ一方的なイスラエルの侵攻という形で進み、10月7日で1年を迎える。ガザの死者が4万人、しかもその大半は子どもを含む一般市民という状況の中、国際社会からの度重なる停戦要求も実らず、残念ながら当分の間イスラエルの攻撃は続くものと見られ、犠牲者の数も増え続けることが避けられない状況だ。
それにしてもイスラエルは、どれだけ世界から指弾されてもガザへの攻撃をやめないどころか、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラやイエメンのフーシ派など、多方面に戦線を拡大している。そして、1日のイランによるミサイル攻撃で、遂にイランまでがイスラエルと限定的とは言え、戦争状態に突入しようとしている。
イスラエルの先進技術と軍事力、そしてアメリカからの軍事支援が当面は続くと予想されることから、仮にイランと戦火を交えることになったとしてもイスラエルの軍事的な優位性は揺るがないと考えられている。しかし、もはやイスラエルの最大の敵は国外の反イスラエル勢力ではなく、イスラエルが国内に抱えた極右勢力であることがイスラエルにとっては国家存亡に関わる最大のリスクファクターになっているとの指摘が出始めている。
なぜイスラエルは世界から指弾を受けてもガザ攻撃を続け、遂にはレバノンやイエメン、そしてイランにまで戦火を拡大しなければならないのか。日本女子大学文学部教授でイスラエル・パレスチナ研究の第一人者の臼杵陽氏は、イスラエル国内の政治状況にその原因があると指摘する。ネタニヤフ政権は内政的に不安定な状況にあり、政権を延命するために国内の目を外に向けようと戦争を継続している面があるのだと言う。
1院制の議会を比例代表方式で選出しているイスラエルでは、政府は1948年の建国以来、常に連立政権で成り立ってきた。様々な背景を持ったユダヤ人やアラブ人が集まって20世紀にいわば人為的に国家を建設したイスラエルは、完全比例選挙では多数の少数政党が生まれやすく、宗教政党や極右政党も議席を得やすい構造になっている。
ネタニヤフ首相が率いる「リクード」は世俗的右派に属するが、120の議席があるイスラエル国会では32議席しか持っていない。結果的にネタニヤフ政権は宗教政党の「シャス」、「統一トーラー・ユダヤ連合」や、極右政党の「宗教シオニズム」、「ユダヤの力」などと連立し、68議席の右派連合を作っている。仮に宗教政党や極右政党が政権から離脱してしまえば、右派連合は過半数を維持できなくなる恐れがある。
ネタニヤフ首相が率いるリクード自体が元来、思想的には保守であり、ユダヤ民族主義を強調する傾向があるが、それ以上に連立のパートナーを組む「宗教シオニズム」と「ユダヤの力」の2つの極右勢力が、パレスチナの入植拡大を叫ぶなどナショナリズムを煽る政策を強く主張し、保守的なネタニヤフ政権を更に右に引っ張っている。実際に今年6月にも、ハマスと停戦合意すれば連立を離脱すると脅しをかけるなどして、和平プロセスの妨げとなっている。いわば、2つの少数政党が政権のキャスティングボートを握ることで政権を操る事態に陥っているのだ。
しかし、例え軍事的な優位性があるとはいえ、イスラエルもいつまでも戦火を拡大しているわけにもいかない。イスラエル経済にも重圧となっていることに加え、このままではイスラエルの国際的な立場は悪くなる一方だ。また、イスラエル国内にも反戦運動や厭戦機運が出始めているという。
中東でなぜ戦火が拡大しているのか、なぜイスラエルはガザから撤退できないのか、原油の94%を中東諸国に依存している日本への影響はないのかなどについて、日本女子大学文学部教授の臼杵陽氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
後半はこちら→so44180985
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<永田町ポリティコ>何が「石破らしさ」を阻んでいるのか
石破政権が発足した。
ところが発足直後から、いや正確には政権発足の前から、石破政権は波乱の船出となった。
先週の金曜日に総裁選を接戦で制し、月曜に晴れて自民党総裁室に入った石破氏を待ち受けていたのは、党官僚による洗礼だった。党では小泉進次郎氏が新総裁になる可能性が高いと見て、小泉氏が繰り返し主張してきた早期解散を前提に準備を進めていた。選対委員長に就いた小泉氏はもとより、森山幹事長も早期解散で既に動いていた。友党の公明党まで早期選挙を求めていた。
しかし、総裁選で石破氏は早期解散を主張する小泉氏に対して、解散総選挙に踏み切る以上、有権者に選択の材料を与える必要があると主張し、最低でも予算委員会を開いて、能登支援のための補正予算の編成を行ってから選挙を行うべきだと主張していた。能登を訪問してその惨状を自身が目の当たりにしたことも、石破氏が補正予算にこだわる理由だった。
党の主流が27日解散を主張する中、石破氏は11月10日の投票で予算委員会の開催を主張した。しかし、多勢に無勢、党にも執行部にも石破氏の肩を持つ人はほとんどいなかった。
確かに党利党略としては早期解散が望まれることは間違いない。新政権の新鮮さが失われる前に選挙に打って出た方が得という考え方も、野党側が候補者一本化のための調整を行う猶予を与えないためにも、早い解散には理があった。予算委員会などを開いて野党の攻勢に晒されるリスクを冒したくないという気持ちもあるだろう。しかし、それでは石破氏が嘘つきになってしまう。それに、そもそも石破氏自身は過去に、党利党略のための7条解散には否定的な発言を繰り返してきた。その立場からも、また自身の前言とも食い違う日程を選ぶことも、石破氏にとっては苦しい判断となった。
結果的に石破氏は憔悴しきった顔で党の記者会見の冒頭で登壇し、普段の石破氏の作法とは明らかに異なる、目の前の原稿を棒読みするというスタイルで27日の選挙を決めたことだけを発表した。1回戦は石破氏の完敗だった。
首班指名を受け首相となった石破氏を次に待ち受けるのは、裏金議員の公認問題だ。裏金議員の公認には否定的な姿勢を見せてきた石破氏にとっては、これが次なる大きな鬼門となる。党内には党内融和のためにも、また自民党の議席の最大化のためにも、裏金議員、特に当選の可能性の高い議員は公認すべきとの意見が根強い。しかし、その一方で、裏金議員の扱い次第では、有権者が石破政権に抱いている、「もしかすると自民党を変えてくれるかもしれない」との淡い期待を完全に打ち砕くことになりかねない。
石破政権の背後で何が起きているのか。なぜ石破首相はここまで「石破らしさ」を発揮できずにいるのか。石破氏の行く手は阻むものとは何なのか。そして、石破氏は最後には有権者の期待に応えられるのか。総裁選と石破政権成立の舞台裏をつぶさに取材してきた政治ジャーナリストの角谷浩一とジャーナリストの神保哲生に、今回はポリティコ特別版として社会学者の宮台真司を加えて議論した。
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<マル激・後半>脱アベノミクスを掲げる石破政権に経済政策の決め手はあるか/熊野英生氏(第一生命経済研究所首席エコノミスト)
自民党総裁選が9月27日に行われ、石破茂元幹事長が新総裁に選出された。10月1日に国会で首班指名を受け、石破政権が誕生することが確実視されている。
総裁選は実質的に安倍首相の政策路線の踏襲を掲げる高市早苗氏と、安倍政治に一貫して反旗を翻してきた石破氏との決選投票での一騎打ちとなり、僅差で石破氏が差し切った。結果的に石破政権は10年ぶりに安倍派の後ろ盾を必要としない、よってその縛りのかからない政権となった。
少なくとも過去10年にわたり日本の政治を支配してきた安倍政治や安倍元首相が進めてきたアベノミクスと決別することは容易いことではない。また、それに取って代わる政策の柱に石破政権が何を据えるのかは、まだ必ずしも明確になっていない。
小泉構造改革からアベノミクスへと、日本は新自由主義的な構造改革路線を突き進んできたが、その間、経済成長は実現できず、今も「失われた30年」から抜け出せずにいる。ここにきてようやくデフレから脱却できたのはいいが、逆に物価高に襲われ資源インフレの可能性も出ているなど、国民生活は圧迫され続けている。そうした中にあって日本経済を新たな成長路線に乗せられるかどうかは、新政権にとって最重要課題と言っても過言ではない。
第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏は、アベノミクスの弊害は大きかったと指摘する。なぜならアベノミクスは国内の経済格差を広げ、年金生活者や低所得者といった社会的弱者を苦しめる政策だったからだ。
岸田首相はアベノミクスに対してより分配を重視する「新しい資本主義」を掲げたが、権力基盤を安倍晋三氏や菅義偉氏に頼っていたために、ほとんど自らの主張する政策を実現することができなかった。しかし、統一教会問題と裏金問題で党内最大勢力の安倍派が壊滅状態に陥った中で誕生した石破政権は、政策的にはかなりのフリーハンドを与えられていると考えられる。
石破氏がいの一番に掲げるのが格差の是正だ。これは所得格差の是正と東京と地方の格差是正の両方を意味している。しかし、熊野氏は単なる再配分だけで格差を是正することはできないと指摘する。ポイントはまず石破氏が新自由主義やアベノミクスに対するはっきりとしたオルタナティブを掲げ、その政策によって日本が成長できることを示すことだという。
人口減少局面で経済成長を実現するためには、生産性を上げる必要がある。つまり、もっと稼げるようにならなければだめだということだ。
熊野氏は、石破氏の持論である地方創生には十分な成長の可能性があると語る。地方創生も従来型の補助金や公共事業だけではもはや実現は難しい。しかし、石破氏の推進する地方創生と、インバウンド振興やリモートワーク、AIの推進を組み合わせれば、日本にはまだまだ成長の伸びしろが残っていると熊野氏は言うのだ。
日本はインバウンドで年間10兆円も稼げるようになっているが、その対象地域はまだ一部の観光地に限られる。しかし、熊野氏は日本にはきちんと整備すれば多くのインバウンドが期待できる地域がまだたくさんあると言う。石破氏の地方創生の一環で日本中にインバウンドを呼べるようなインフラを整備し、AIの活用で日本語ができない人でも楽しめる環境を作る。そして、リモートワークやAIを活用することで、東京や都市部に住んでいなくても、同じような生産性=賃金を得られる仕事が可能となる環境を整えれば、石破政権の掲げる地方創生と日本全体の経済成長は十分に実現が可能だと熊野氏は言う。
石破氏はどのような経済政策を目指しているのか、日本には今どんな選択肢があり、石破政権はそれを実現することができるのかなどについて、第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
前半はこちら→so44154908
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<マル激・前半>脱アベノミクスを掲げる石破政権に経済政策の決め手はあるか/熊野英生氏(第一生命経済研究所首席エコノミスト)
自民党総裁選が9月27日に行われ、石破茂元幹事長が新総裁に選出された。10月1日に国会で首班指名を受け、石破政権が誕生することが確実視されている。
総裁選は実質的に安倍首相の政策路線の踏襲を掲げる高市早苗氏と、安倍政治に一貫して反旗を翻してきた石破氏との決選投票での一騎打ちとなり、僅差で石破氏が差し切った。結果的に石破政権は10年ぶりに安倍派の後ろ盾を必要としない、よってその縛りのかからない政権となった。
少なくとも過去10年にわたり日本の政治を支配してきた安倍政治や安倍元首相が進めてきたアベノミクスと決別することは容易いことではない。また、それに取って代わる政策の柱に石破政権が何を据えるのかは、まだ必ずしも明確になっていない。
小泉構造改革からアベノミクスへと、日本は新自由主義的な構造改革路線を突き進んできたが、その間、経済成長は実現できず、今も「失われた30年」から抜け出せずにいる。ここにきてようやくデフレから脱却できたのはいいが、逆に物価高に襲われ資源インフレの可能性も出ているなど、国民生活は圧迫され続けている。そうした中にあって日本経済を新たな成長路線に乗せられるかどうかは、新政権にとって最重要課題と言っても過言ではない。
第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏は、アベノミクスの弊害は大きかったと指摘する。なぜならアベノミクスは国内の経済格差を広げ、年金生活者や低所得者といった社会的弱者を苦しめる政策だったからだ。
岸田首相はアベノミクスに対してより分配を重視する「新しい資本主義」を掲げたが、権力基盤を安倍晋三氏や菅義偉氏に頼っていたために、ほとんど自らの主張する政策を実現することができなかった。しかし、統一教会問題と裏金問題で党内最大勢力の安倍派が壊滅状態に陥った中で誕生した石破政権は、政策的にはかなりのフリーハンドを与えられていると考えられる。
石破氏がいの一番に掲げるのが格差の是正だ。これは所得格差の是正と東京と地方の格差是正の両方を意味している。しかし、熊野氏は単なる再配分だけで格差を是正することはできないと指摘する。ポイントはまず石破氏が新自由主義やアベノミクスに対するはっきりとしたオルタナティブを掲げ、その政策によって日本が成長できることを示すことだという。
人口減少局面で経済成長を実現するためには、生産性を上げる必要がある。つまり、もっと稼げるようにならなければだめだということだ。
熊野氏は、石破氏の持論である地方創生には十分な成長の可能性があると語る。地方創生も従来型の補助金や公共事業だけではもはや実現は難しい。しかし、石破氏の推進する地方創生と、インバウンド振興やリモートワーク、AIの推進を組み合わせれば、日本にはまだまだ成長の伸びしろが残っていると熊野氏は言うのだ。
日本はインバウンドで年間10兆円も稼げるようになっているが、その対象地域はまだ一部の観光地に限られる。しかし、熊野氏は日本にはきちんと整備すれば多くのインバウンドが期待できる地域がまだたくさんあると言う。石破氏の地方創生の一環で日本中にインバウンドを呼べるようなインフラを整備し、AIの活用で日本語ができない人でも楽しめる環境を作る。そして、リモートワークやAIを活用することで、東京や都市部に住んでいなくても、同じような生産性=賃金を得られる仕事が可能となる環境を整えれば、石破政権の掲げる地方創生と日本全体の経済成長は十分に実現が可能だと熊野氏は言う。
石破氏はどのような経済政策を目指しているのか、日本には今どんな選択肢があり、石破政権はそれを実現することができるのかなどについて、第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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【全編無料】古谷経衡氏出演!「床屋政談 都知事選、つばさの党、参政党etc」(2024年6月27日)
古谷経衡氏出演!「床屋政談 都知事選、つばさの党、参政党etc」
※チャンネル管理者より
…番組内でも言及しておりますが司会のジョー横溝が喘息を発症し、通院と投薬で治療を行っております。出演者には番組開始前にその旨はお伝えしておりますが、ご視聴の皆さんにお聞き苦しい点がありましたこと、お詫び申し上げます。
※2024年6月~のニコ生サーバーダウンによりYouTubeで無料公開した回のため、全編無料で公開しています
【番組について】
●6月27日(木)21時から生配信
●ゲスト:古谷経衡
●出演:宮台真司(社会学者)、ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
<マル激・後半>自民党総裁選から読み解く日本の現在地とその選択肢/河野有理氏(法政大学法学部教授)
事実上、次の日本の首位を選ぶ自民党総裁選まで1週間を切った。9人もの候補者が乱立している割には、各論の政策論争はあるものの、その選択が大局的な観点から日本という国の針路にどのような影響を与えるかについては、ほとんど議論も論評も見られないのが残念だ。
この総裁選は実は過去10年にわたり日本の政治を牽引してきた安倍政治継承の是非が問われている選挙でもあり、さらに遡れば小泉政権による構造改革路線以降、推進されてきた新自由主義的な改革を方向転換するのかどうかが問われている重要な選挙でもある。
総裁選そのものに一般有権者の投票権はないが、そこで自民党の党員と国会議員がどのような選択を下すかは、今後の国政選挙における投票行動の重要な指針となるはずだ。
自民党は2009年の総選挙で大敗を喫し野党に転落したが、その選挙の当選者は民主党の308に対し119という自民党にとっては正に壊滅的な敗北だった。しかし、その後、民主党政権の失敗などもあり、安倍新総裁の下で衆院の議席が300近くになるまで党勢を回復させた。その意味で、今日の自民党は正に安倍自民党と言っても過言ではない状態にあった。
岸田政権が発足した際、宮沢喜一首相以来の宏池会出身の首相となった岸田氏は政権発足当初は「新しい資本主義」などを政策の旗印に掲げ、アベノミクスから決別する意思を明確に示していた。しかし、岸田政権も所詮は党内力学的には安倍政権と同じ安倍、麻生、茂木派ら自民党主流派の後押しで成立した政権だった。厳しい言い方をすれば、安倍傀儡政権だったのだ。岸田首相個人の思いはそうした党内力学の前に無視され、岸田政権では路線転換につながる政策はほとんど何も実現できなかった。
しかし、その後、安倍氏が凶弾に倒れ、統一教会問題や裏金問題の発覚で党内最大を誇った安倍派が崩壊状態に陥る中で、自民党は今回の総裁選を迎えている。その意味でこの総裁選で誰が次の総裁=首相になるかは、自民党の、ひいては日本の今後の針路を左右する重大な選択になる。
アベノミクスの下で円安が進み、株価は上がり大企業は史上最高益を毎年塗り替えた。しかし、その間、賃金は上がらず国民負担率も上昇を続けた。さらにここにきて物価が高騰し、国民生活は苦しくなる一方だ。相変わらず教育支出も子育て支援も限られている中で、少子化はさらに進んでいる。そうした中で格差は広がり社会の分断が進んだ。
今日本が問われているのは、このアベノミクス路線をこれからも続けるのか。引き続き市場を重視し、格差と分断を容認するのか、再配分重視へシフトすることで格差を是正し社会の連帯の再構築を図るのか。自己責任に重きを置くのか、リスクを社会に分散させるのか。この総裁選はその選択を問うものでなければならないはずだ。
政治思想史が専門の河野有理・法政大学法学部教授は、特に決選投票が石破対高市になった場合、安倍路線継承の是非が問われることになると指摘する。実際、高市氏の推薦人は大半を安倍派の議員が占め、支援者にもアベノミクスを推進した学者らが多く参集している。
これに対して、田中角栄氏を政治的な父と仰ぐ石破氏は、高市氏や他の候補と比べると、再分配志向が強く、たびたび格差の是正の必要性を訴えている。そこでいう格差とは所得格差であり、東京などの都市部と取り残された地方との格差でもある。田中政権の日本列島改造論当時、日本は右肩上がりの高度経済成長期にあり、再配分するための新たな財源が毎年生まれていた。しかし今日本は人口も減り、経済も縮小する中で、再分配する財源がそもそも細ってきている。格差を解消する方法が再配分だけでは足りない場合、それに代わる概念として例えば小さな経済圏を作ってそれを連携させる「自治」が考えられるが、果たして鳥取出身の石破氏はそれを理解できているか。
河野有理氏は、石破氏は政治改革や安全保障など自分が得意とする抽象的なテーマを好んで論じる傾向があり、財政や金融といった経済政策にはこれまであまり具体的にコミットしてこなかったことを指摘する。これまで党や内閣の要職を歴任してきた石破氏ではあるが、財務相や経産相の経験はない。現実的に石破政権というものを考えなければならないとなると、首相を支える経済チームがどのような布陣になるかが重要になる。
一方、高市氏はこの総裁選を保守対リベラルの戦いと捉え、その認識を明確に打ち出すことで、岩盤保守の支持をしっかりと掴んでいると河野氏は語る。しかし、高市氏に靖国神社に参拝し、夫婦別姓に反対し、女系天皇に反対するといった岩盤保守層が好む政策以外にどのような政策があるのか、とりわけ経済政策については未知数のところがあると指摘する。
この総裁選は日本に何を問うているのか。日本には今どのような選択肢があるのか。自己責任論に下支えされた新自由主義路線を今後も続けるのか、新たな道は存在するのかなどについて、法政大学法学部政治学科教授の河野有理氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
前半はこちら→so44128727
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<マル激・前半>自民党総裁選から読み解く日本の現在地とその選択肢/河野有理氏(法政大学法学部教授)
事実上、次の日本の首位を選ぶ自民党総裁選まで1週間を切った。9人もの候補者が乱立している割には、各論の政策論争はあるものの、その選択が大局的な観点から日本という国の針路にどのような影響を与えるかについては、ほとんど議論も論評も見られないのが残念だ。
この総裁選は実は過去10年にわたり日本の政治を牽引してきた安倍政治継承の是非が問われている選挙でもあり、さらに遡れば小泉政権による構造改革路線以降、推進されてきた新自由主義的な改革を方向転換するのかどうかが問われている重要な選挙でもある。
総裁選そのものに一般有権者の投票権はないが、そこで自民党の党員と国会議員がどのような選択を下すかは、今後の国政選挙における投票行動の重要な指針となるはずだ。
自民党は2009年の総選挙で大敗を喫し野党に転落したが、その選挙の当選者は民主党の308に対し119という自民党にとっては正に壊滅的な敗北だった。しかし、その後、民主党政権の失敗などもあり、安倍新総裁の下で衆院の議席が300近くになるまで党勢を回復させた。その意味で、今日の自民党は正に安倍自民党と言っても過言ではない状態にあった。
岸田政権が発足した際、宮沢喜一首相以来の宏池会出身の首相となった岸田氏は政権発足当初は「新しい資本主義」などを政策の旗印に掲げ、アベノミクスから決別する意思を明確に示していた。しかし、岸田政権も所詮は党内力学的には安倍政権と同じ安倍、麻生、茂木派ら自民党主流派の後押しで成立した政権だった。厳しい言い方をすれば、安倍傀儡政権だったのだ。岸田首相個人の思いはそうした党内力学の前に無視され、岸田政権では路線転換につながる政策はほとんど何も実現できなかった。
しかし、その後、安倍氏が凶弾に倒れ、統一教会問題や裏金問題の発覚で党内最大を誇った安倍派が崩壊状態に陥る中で、自民党は今回の総裁選を迎えている。その意味でこの総裁選で誰が次の総裁=首相になるかは、自民党の、ひいては日本の今後の針路を左右する重大な選択になる。
アベノミクスの下で円安が進み、株価は上がり大企業は史上最高益を毎年塗り替えた。しかし、その間、賃金は上がらず国民負担率も上昇を続けた。さらにここにきて物価が高騰し、国民生活は苦しくなる一方だ。相変わらず教育支出も子育て支援も限られている中で、少子化はさらに進んでいる。そうした中で格差は広がり社会の分断が進んだ。
今日本が問われているのは、このアベノミクス路線をこれからも続けるのか。引き続き市場を重視し、格差と分断を容認するのか、再配分重視へシフトすることで格差を是正し社会の連帯の再構築を図るのか。自己責任に重きを置くのか、リスクを社会に分散させるのか。この総裁選はその選択を問うものでなければならないはずだ。
政治思想史が専門の河野有理・法政大学法学部教授は、特に決選投票が石破対高市になった場合、安倍路線継承の是非が問われることになると指摘する。実際、高市氏の推薦人は大半を安倍派の議員が占め、支援者にもアベノミクスを推進した学者らが多く参集している。
これに対して、田中角栄氏を政治的な父と仰ぐ石破氏は、高市氏や他の候補と比べると、再分配志向が強く、たびたび格差の是正の必要性を訴えている。そこでいう格差とは所得格差であり、東京などの都市部と取り残された地方との格差でもある。田中政権の日本列島改造論当時、日本は右肩上がりの高度経済成長期にあり、再配分するための新たな財源が毎年生まれていた。しかし今日本は人口も減り、経済も縮小する中で、再分配する財源がそもそも細ってきている。格差を解消する方法が再配分だけでは足りない場合、それに代わる概念として例えば小さな経済圏を作ってそれを連携させる「自治」が考えられるが、果たして鳥取出身の石破氏はそれを理解できているか。
河野有理氏は、石破氏は政治改革や安全保障など自分が得意とする抽象的なテーマを好んで論じる傾向があり、財政や金融といった経済政策にはこれまであまり具体的にコミットしてこなかったことを指摘する。これまで党や内閣の要職を歴任してきた石破氏ではあるが、財務相や経産相の経験はない。現実的に石破政権というものを考えなければならないとなると、首相を支える経済チームがどのような布陣になるかが重要になる。
一方、高市氏はこの総裁選を保守対リベラルの戦いと捉え、その認識を明確に打ち出すことで、岩盤保守の支持をしっかりと掴んでいると河野氏は語る。しかし、高市氏に靖国神社に参拝し、夫婦別姓に反対し、女系天皇に反対するといった岩盤保守層が好む政策以外にどのような政策があるのか、とりわけ経済政策については未知数のところがあると指摘する。
この総裁選は日本に何を問うているのか。日本には今どのような選択肢があるのか。自己責任論に下支えされた新自由主義路線を今後も続けるのか、新たな道は存在するのかなどについて、法政大学法学部政治学科教授の河野有理氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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<マル激・後半>日本の次の総理を決める選挙でアベノミクス継承の是非を問わずにどうする/大沢真理氏(東京大学名誉教授)
岸田首相の後継を決める自民党の総裁選が9月12日に告示され、27日の投開票に向けて選挙戦が始まった。15日間という異例の長い選挙期間が設けられ、その間9人の候補者が討論会や立会演説会などで盛んに政策論争を交わす設定になっているが、ここまでの政策には疑問を禁じ得ない。それは、誰もアベノミクスの検証の必要性を口にしないまま、それぞれに勝手な経済政策を主張しているからだ。
今の日本にとって最大の懸案事項は、世界の先進国で唯一30年間、まったくといっていいほど経済成長ができず、生産性の向上も実現できなかったために、日本の国際的な地位がつるべ落としのように低下していることだ。しかも、最新の政府調査では生活が苦しいと感じている人の割合が半数を超えている。自民党はこの先もアベノミクス路線、すなわち新自由主義路線を継続するのか、それとも岸田首相が提唱はしたものの結局実現できなかった再分配路線に舵を切るのかは、この先の日本の針路を占う上でも最も重要な選択肢になるはずだ。
今年7月に公表された最新の国民生活基礎調査では、「生活が苦しい」と答える人の割合が59.6%に上った。国民の生活苦の原因は、賃金が上がらないことと物価の上昇が止まらないことだ。この30年間、アベノミクスによる円安のおかげで大企業は空前の利益を記録してきたが、その果実の大半は株主配当や内部留保に消え、労働者には還元されずに来た。しかも、その間も非正規雇用の割合が増え続けたため、実質賃金は低下し続けてきた。
東京大学名誉教授の大沢真理氏は、2016年以降の実質賃金の低下は消費税増税や円安の影響で物価が上がったことによるものだが、デフレだった2016年くらいまで、本来は上がるはずの実質賃金が下がってきたのは、雇用が非正規化したことが大きいと指摘する。ここ数年はアベノミクスによる円安で、輸入に頼っている食料品やエネルギーの価格はますます高騰し、国民の6割もが生活困窮を訴える状況になった。
そもそもアベノミクスとは「大胆な金融政策・機動的な財政政策・民間投資を喚起する成長戦略」の3本の矢から成るものだと喧伝されてきた。しかし大沢氏はこのスローガンには偽りがあると指摘する。
大沢氏の考えるアベノミクスの正体とは、雇用の非正規化の拡大や消費税増税、円安によるインフレで賃金を低下させた一方で、国民負担の逆進性を強める低所得層や中間層に対する「負担増と給付減」、とりわけ社会保障費の給付減に力点が置かれていた。第二次安倍内閣の最初の骨太の方針にある、「健康長寿、生涯現役、頑張る者が報われる社会の構築」、「社会保障に過度に依存しなくて済む社会」とは、「病気になるな」、「要介護になるな」、「頑張らない者は見捨てる」と宣言したものだったと大沢氏は言う。そして、実際に安倍政権はそれをことごとく実現した。
第一の標的に上がったのが、セーフティネットの中でも最後の砦ともいうべき生活保護だった。安倍政権は「生活保護費の1割削減」をスローガンに掲げ、生活保護の受給の手助けをする市民団体には警察の捜査を入れてまで、生活保護の削減に取り組んだ。
地域保健体制の脆弱化の加速もアベノミクスの一環で推進された。コロナ禍で日本のPCR検査数が一向に増えないことが度々問題視されたが、これは地域衛生研究所の職員数が削減される中で起きるべくして起きたことだった。
そうした中で、日本の中間層は没落し生活困窮者が急増した。
そうした国民生活の現状に目を向け、これまでの「アベノミクス」路線を継承するのか修正するのか、修正するとすればどのように修正するのかが、自民党の総裁選で最も先に問われるべきことではないか。小泉構造改革に始まりアベノミクスでとどめを刺した感のある新自由主義的な切り捨て経済政策が、失われた30年の間に日本に何をもたらしたのか、それをふまえて日本は今どのような選択をするべきなのかなどについて、東京大学名誉教授の大沢真理氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
前半はこちら→so44103006
(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
<マル激・前半>日本の次の総理を決める選挙でアベノミクス継承の是非を問わずにどうする/大沢真理氏(東京大学名誉教授)
岸田首相の後継を決める自民党の総裁選が9月12日に告示され、27日の投開票に向けて選挙戦が始まった。15日間という異例の長い選挙期間が設けられ、その間9人の候補者が討論会や立会演説会などで盛んに政策論争を交わす設定になっているが、ここまでの政策には疑問を禁じ得ない。それは、誰もアベノミクスの検証の必要性を口にしないまま、それぞれに勝手な経済政策を主張しているからだ。
今の日本にとって最大の懸案事項は、世界の先進国で唯一30年間、まったくといっていいほど経済成長ができず、生産性の向上も実現できなかったために、日本の国際的な地位がつるべ落としのように低下していることだ。しかも、最新の政府調査では生活が苦しいと感じている人の割合が半数を超えている。自民党はこの先もアベノミクス路線、すなわち新自由主義路線を継続するのか、それとも岸田首相が提唱はしたものの結局実現できなかった再分配路線に舵を切るのかは、この先の日本の針路を占う上でも最も重要な選択肢になるはずだ。
今年7月に公表された最新の国民生活基礎調査では、「生活が苦しい」と答える人の割合が59.6%に上った。国民の生活苦の原因は、賃金が上がらないことと物価の上昇が止まらないことだ。この30年間、アベノミクスによる円安のおかげで大企業は空前の利益を記録してきたが、その果実の大半は株主配当や内部留保に消え、労働者には還元されずに来た。しかも、その間も非正規雇用の割合が増え続けたため、実質賃金は低下し続けてきた。
東京大学名誉教授の大沢真理氏は、2016年以降の実質賃金の低下は消費税増税や円安の影響で物価が上がったことによるものだが、デフレだった2016年くらいまで、本来は上がるはずの実質賃金が下がってきたのは、雇用が非正規化したことが大きいと指摘する。ここ数年はアベノミクスによる円安で、輸入に頼っている食料品やエネルギーの価格はますます高騰し、国民の6割もが生活困窮を訴える状況になった。
そもそもアベノミクスとは「大胆な金融政策・機動的な財政政策・民間投資を喚起する成長戦略」の3本の矢から成るものだと喧伝されてきた。しかし大沢氏はこのスローガンには偽りがあると指摘する。
大沢氏の考えるアベノミクスの正体とは、雇用の非正規化の拡大や消費税増税、円安によるインフレで賃金を低下させた一方で、国民負担の逆進性を強める低所得層や中間層に対する「負担増と給付減」、とりわけ社会保障費の給付減に力点が置かれていた。第二次安倍内閣の最初の骨太の方針にある、「健康長寿、生涯現役、頑張る者が報われる社会の構築」、「社会保障に過度に依存しなくて済む社会」とは、「病気になるな」、「要介護になるな」、「頑張らない者は見捨てる」と宣言したものだったと大沢氏は言う。そして、実際に安倍政権はそれをことごとく実現した。
第一の標的に上がったのが、セーフティネットの中でも最後の砦ともいうべき生活保護だった。安倍政権は「生活保護費の1割削減」をスローガンに掲げ、生活保護の受給の手助けをする市民団体には警察の捜査を入れてまで、生活保護の削減に取り組んだ。
地域保健体制の脆弱化の加速もアベノミクスの一環で推進された。コロナ禍で日本のPCR検査数が一向に増えないことが度々問題視されたが、これは地域衛生研究所の職員数が削減される中で起きるべくして起きたことだった。
そうした中で、日本の中間層は没落し生活困窮者が急増した。
そうした国民生活の現状に目を向け、これまでの「アベノミクス」路線を継承するのか修正するのか、修正するとすればどのように修正するのかが、自民党の総裁選で最も先に問われるべきことではないか。小泉構造改革に始まりアベノミクスでとどめを刺した感のある新自由主義的な切り捨て経済政策が、失われた30年の間に日本に何をもたらしたのか、それをふまえて日本は今どのような選択をするべきなのかなどについて、東京大学名誉教授の大沢真理氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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<マル激・後半>なぜか「高規格」救急車事業が食い物にされるおかしすぎるからくり/内尾公治氏(株式会社「赤尾」特需部救急担当)
救急車事業をめぐって、福島県の小さな自治体が揺れている。
人口8,000人という福島県国見町。ここで12台の高規格救急車の開発・製造をして近隣自治体にリースするという事業が2022年9月、町議会で承認された。大手企業による企業版ふるさと納税を原資にするため、町からの予算の持ち出しはないという、当初は国見町にとってもいい話のように見えた。ところがその後、この事業を町と一緒に進めていた会社社長の「超絶いいマネーロンダリング」、「自治体を分捕る」といった発言が報道されたため、契約は解除され、官製談合防止法違反の疑いで百条委員会が設置されることになった。
7月に公表された百条委員会の報告書によると、議会で事業が承認される半年前に、ある大手企業から匿名の企業版ふるさと納税があり、その希望分野が「災害・救急車両の研究開発・製造を通じた地域の防災力向上に向けた取り組みに関すること」と指定されていた。町議会で予算が確定したあと、その大手企業と関連する救急車ベンチャー企業が、先述の「高規格」救急車の開発・製造、及びリース事業を一社のみの競争入札で落札しており、そこに官製談合があった疑いが持たれているのだ。
企業版ふるさと納税とは、正式には「地方創生応援税制」と呼ばれるもので、国が認定した地方公共団体の地方創生の取り組みに対して企業が寄付を行った場合に、法人税などから最大で寄付金額の9割までが軽減されるという制度。内閣府のサイトでは企業側には各地域の取り組みに貢献しながら税の軽減効果が得られるというメリットがあることが謳われている。制度は2016年に内閣府主導で創設され、2023年度の寄付総額は前年度比約1.4倍の約470億円まで膨れ上がっている。
特定の自治体にふるさと納税を行うことで、その企業は税額控除などによって寄付金額の9割までを回収できることに加え、国見町のように見返りに事業を請け負うことができれば、いわば2度おいしい思いができることになる。まさにそこが事業者にとって「超絶いいマネーロンダリング」たる所以だ。その一方で、寄付を受けた自治体側は新たな財源を得ることができる。それだけ聞くとwinwinの関係のようにも聞こえるが、国見町のように寄付した企業に事業の発注という形で還元されてしまえば、本来は法人税として納付されるべき税金が、最終的には寄付した企業の売り上げに化けるものであり、また寄付した事業者が無競争で事業を請け負う「官製談合」や「癒着」の温床ともなり得る危うい制度でもある。
人口減少自治体、ふるさと創生、地域の防災力、レジリエンス、官民共創…。今、注目されている用語が飛び交う中で国見町という小さな自治体で起きたできごとは、一自治体だけの問題では収まらない重大な事態となる恐れがある。いや、既に全国で同じようなことが起きている可能性も否定できない。
しかし、そもそもなぜ救急車なのか。
その背景には、救急車には国の規格がなく、自治体任せになっていることがあると、救急車製造に携わって30年になるという内尾公治氏は指摘する。大学卒業後トヨタの関連会社で救急車の製造に関わってきた内尾氏は、大手メーカーの限界を感じ現在の会社で、要望に応じたカスタムメイドの救急車作りを続けている。
総務省消防庁が高規格救急車と呼んでいるものは、救急救命士が活動している救急車のことで、その意味ではすでに自治体所属の救急車のほとんどが高規格救急車だ。しかし、車自体に「高規格」の基準はなく、現在は認定制度もなくなったため、カタログなどでは「高規格準拠」という定義のないあいまいな表現が使われている。広域事業組合も含め現時点では全国で700あまりの自治体が競争入札で高規格救急車を購入しているが、特に基準がないために車両の質は問われず、価格のみの競争になっているのが実情だと内尾氏はいう。
国見町の場合は、高規格救急車の基準がないことを逆手に取り、そのあいまいさをつく形で12台もの高規格救急車の開発・製造、そしてそのリースを新規事業として持ち込んできた事業者の話に簡単に乗ってしまったのかもしれないと、河北新報のスクープ記事でこの事態を知った内尾氏は語る。その意味では国見町も食い物にされた被害者だったのかもしれないが、同時に美味い話にはもっと気を付けるべきだった。
海外では救急車は安全性や換気、室内温度などの基準が数値で決められているほか、メーカー間の競争もあるため、救急車自体が大きく進化しているが、日本ではそもそも基準がなく、市場もトヨタと日産の独占となっていて競争がないことで、日本の救急車は海外で通用しない質の低いものになっているのが実情だそうだ。
今日、救急車はかつてのように事故や急病の患者を搬送するだけでなく、車内で救急救命士による応急処置を受けたり、医師が同乗して長時間搬送するなど多様な目的がある。新型コロナの感染が拡大する中で活躍したECMO(エクモ)カーもその1つだ。救急車自体も状況の変化に合わせて工夫が重ねられ、より安全により確実に患者の命を救うものになっていかなくてはならないと内尾氏はいう。
われわれの誰もがいつ救急車のお世話にならないとも限らない。その時に救急車のスペックによって助かる命が助からなくなる可能性だって大いにある。今も医師や救急救命士の要望を聞きながら、手作りでカスタム救急車の製造に取り組む内尾公治氏と、社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が、そもそも救急車に今何が起きているのかや、救急車行政の問題点、企業版ふるさと納税の危うい点などについて議論した。
前半はこちら→so44076853
(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
<マル激・前半>なぜか「高規格」救急車事業が食い物にされるおかしすぎるからくり/内尾公治氏(株式会社「赤尾」特需部救急担当)
救急車事業をめぐって、福島県の小さな自治体が揺れている。
人口8,000人という福島県国見町。ここで12台の高規格救急車の開発・製造をして近隣自治体にリースするという事業が2022年9月、町議会で承認された。大手企業による企業版ふるさと納税を原資にするため、町からの予算の持ち出しはないという、当初は国見町にとってもいい話のように見えた。ところがその後、この事業を町と一緒に進めていた会社社長の「超絶いいマネーロンダリング」、「自治体を分捕る」といった発言が報道されたため、契約は解除され、官製談合防止法違反の疑いで百条委員会が設置されることになった。
7月に公表された百条委員会の報告書によると、議会で事業が承認される半年前に、ある大手企業から匿名の企業版ふるさと納税があり、その希望分野が「災害・救急車両の研究開発・製造を通じた地域の防災力向上に向けた取り組みに関すること」と指定されていた。町議会で予算が確定したあと、その大手企業と関連する救急車ベンチャー企業が、先述の「高規格」救急車の開発・製造、及びリース事業を一社のみの競争入札で落札しており、そこに官製談合があった疑いが持たれているのだ。
企業版ふるさと納税とは、正式には「地方創生応援税制」と呼ばれるもので、国が認定した地方公共団体の地方創生の取り組みに対して企業が寄付を行った場合に、法人税などから最大で寄付金額の9割までが軽減されるという制度。内閣府のサイトでは企業側には各地域の取り組みに貢献しながら税の軽減効果が得られるというメリットがあることが謳われている。制度は2016年に内閣府主導で創設され、2023年度の寄付総額は前年度比約1.4倍の約470億円まで膨れ上がっている。
特定の自治体にふるさと納税を行うことで、その企業は税額控除などによって寄付金額の9割までを回収できることに加え、国見町のように見返りに事業を請け負うことができれば、いわば2度おいしい思いができることになる。まさにそこが事業者にとって「超絶いいマネーロンダリング」たる所以だ。その一方で、寄付を受けた自治体側は新たな財源を得ることができる。それだけ聞くとwinwinの関係のようにも聞こえるが、国見町のように寄付した企業に事業の発注という形で還元されてしまえば、本来は法人税として納付されるべき税金が、最終的には寄付した企業の売り上げに化けるものであり、また寄付した事業者が無競争で事業を請け負う「官製談合」や「癒着」の温床ともなり得る危うい制度でもある。
人口減少自治体、ふるさと創生、地域の防災力、レジリエンス、官民共創…。今、注目されている用語が飛び交う中で国見町という小さな自治体で起きたできごとは、一自治体だけの問題では収まらない重大な事態となる恐れがある。いや、既に全国で同じようなことが起きている可能性も否定できない。
しかし、そもそもなぜ救急車なのか。
その背景には、救急車には国の規格がなく、自治体任せになっていることがあると、救急車製造に携わって30年になるという内尾公治氏は指摘する。大学卒業後トヨタの関連会社で救急車の製造に関わってきた内尾氏は、大手メーカーの限界を感じ現在の会社で、要望に応じたカスタムメイドの救急車作りを続けている。
総務省消防庁が高規格救急車と呼んでいるものは、救急救命士が活動している救急車のことで、その意味ではすでに自治体所属の救急車のほとんどが高規格救急車だ。しかし、車自体に「高規格」の基準はなく、現在は認定制度もなくなったため、カタログなどでは「高規格準拠」という定義のないあいまいな表現が使われている。広域事業組合も含め現時点では全国で700あまりの自治体が競争入札で高規格救急車を購入しているが、特に基準がないために車両の質は問われず、価格のみの競争になっているのが実情だと内尾氏はいう。
国見町の場合は、高規格救急車の基準がないことを逆手に取り、そのあいまいさをつく形で12台もの高規格救急車の開発・製造、そしてそのリースを新規事業として持ち込んできた事業者の話に簡単に乗ってしまったのかもしれないと、河北新報のスクープ記事でこの事態を知った内尾氏は語る。その意味では国見町も食い物にされた被害者だったのかもしれないが、同時に美味い話にはもっと気を付けるべきだった。
海外では救急車は安全性や換気、室内温度などの基準が数値で決められているほか、メーカー間の競争もあるため、救急車自体が大きく進化しているが、日本ではそもそも基準がなく、市場もトヨタと日産の独占となっていて競争がないことで、日本の救急車は海外で通用しない質の低いものになっているのが実情だそうだ。
今日、救急車はかつてのように事故や急病の患者を搬送するだけでなく、車内で救急救命士による応急処置を受けたり、医師が同乗して長時間搬送するなど多様な目的がある。新型コロナの感染が拡大する中で活躍したECMO(エクモ)カーもその1つだ。救急車自体も状況の変化に合わせて工夫が重ねられ、より安全により確実に患者の命を救うものになっていかなくてはならないと内尾氏はいう。
われわれの誰もがいつ救急車のお世話にならないとも限らない。その時に救急車のスペックによって助かる命が助からなくなる可能性だって大いにある。今も医師や救急救命士の要望を聞きながら、手作りでカスタム救急車の製造に取り組む内尾公治氏と、社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が、そもそも救急車に今何が起きているのかや、救急車行政の問題点、企業版ふるさと納税の危うい点などについて議論した。
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(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
<マル激・後半>5金スペシャル・映画が描く「つまらない社会」とその処方箋、そしてつまらなそうな自民党総裁選が問うもの
月の5回目の金曜日に特別企画を無料放送でお届けする5金スペシャル。今回は久しぶりに映画特集をお送りする。
今回取り上げた映画やドラマは「地面師たち」(大根仁監督)、「Chime」(黒沢清監督)、「マミー」(二村真弘監督)、「無言歌」(ふるいちやすし監督)、「転校生」(金井純一監督)、「そうして私たちはプールに金魚を、」(長久允監督)の6作品。いずれも社会のつまらなさや異常さ、理不尽さが隠れたテーマになっている作品だ。
「地面師たち」は土地をめぐる実在する詐欺事件をモデルにした小説を原作としたネットフリックスのドラマシリーズで、われわれがいかに土地所有という概念に取り憑かれ、振り回されているかを物語る作品だ。昨今の都内で所狭しと高層ビルの乱開発が進む背景が垣間見えるところも興味深い。
「Chime」は、何の変哲もない日常を送っていた料理教室の講師が、不審な行動を取る生徒との出会いをきっかけに、日常のつまらなさを痛感させられるとともに、非日常の危ない世界へと誘われていく様が描かれている。
「マミー」はこの番組でも繰り返し取り上げてきた和歌山カレー事件を扱ったドキュメンタリー作品で、警察や検察、メディアをはじめとする社会の総意が働いた結果、無罪の可能性が非常に高い林眞須美氏が犯人に仕立て上げられていった経緯が検証されている。警察に検察、メディア、そして裁判所などそれぞれが自分の立場からは合理的と思われる行動を取った結果、明らかに不合理な結論に達してしまう合成の誤謬が巧みに描かれている。
「無言歌」、「転校生」、「そうして私たちはプールに金魚を、」の3作品はいずれも女子中学生や女子高生が主人公の短編映画で、つまらない社会から抜け出したいと願う若者たちの希望や絶望が描かれている。
どの作品も現実の社会のつまらなさが描かれているとともに、社会をつまらなくしている原因やそこから抜け出すための処方箋のヒントが鏤められているようにも見える。
なお、番組の冒頭では、現在の政局を「長老支配」と「安倍(清和会)政治」を終わらせようとする岸田首相の目論見という視点から、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
前半はこちら→so44047545
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<マル激・前半>5金スペシャル・映画が描く「つまらない社会」とその処方箋、そしてつまらなそうな自民党総裁選が問うもの
月の5回目の金曜日に特別企画を無料放送でお届けする5金スペシャル。今回は久しぶりに映画特集をお送りする。
今回取り上げた映画やドラマは「地面師たち」(大根仁監督)、「Chime」(黒沢清監督)、「マミー」(二村真弘監督)、「無言歌」(ふるいちやすし監督)、「転校生」(金井純一監督)、「そうして私たちはプールに金魚を、」(長久允監督)の6作品。いずれも社会のつまらなさや異常さ、理不尽さが隠れたテーマになっている作品だ。
「地面師たち」は土地をめぐる実在する詐欺事件をモデルにした小説を原作としたネットフリックスのドラマシリーズで、われわれがいかに土地所有という概念に取り憑かれ、振り回されているかを物語る作品だ。昨今の都内で所狭しと高層ビルの乱開発が進む背景が垣間見えるところも興味深い。
「Chime」は、何の変哲もない日常を送っていた料理教室の講師が、不審な行動を取る生徒との出会いをきっかけに、日常のつまらなさを痛感させられるとともに、非日常の危ない世界へと誘われていく様が描かれている。
「マミー」はこの番組でも繰り返し取り上げてきた和歌山カレー事件を扱ったドキュメンタリー作品で、警察や検察、メディアをはじめとする社会の総意が働いた結果、無罪の可能性が非常に高い林眞須美氏が犯人に仕立て上げられていった経緯が検証されている。警察に検察、メディア、そして裁判所などそれぞれが自分の立場からは合理的と思われる行動を取った結果、明らかに不合理な結論に達してしまう合成の誤謬が巧みに描かれている。
「無言歌」、「転校生」、「そうして私たちはプールに金魚を、」の3作品はいずれも女子中学生や女子高生が主人公の短編映画で、つまらない社会から抜け出したいと願う若者たちの希望や絶望が描かれている。
どの作品も現実の社会のつまらなさが描かれているとともに、社会をつまらなくしている原因やそこから抜け出すための処方箋のヒントが鏤められているようにも見える。
なお、番組の冒頭では、現在の政局を「長老支配」と「安倍(清和会)政治」を終わらせようとする岸田首相の目論見という視点から、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
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