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<マル激・後半>トランプのアメリカで起きている歴史的な変化を見誤ってはならない/会田弘継氏(ジャーナリスト・思想史家)
年が明けるとトランプ政権が始動する。既に関税の大幅引き上げや百万人単位の違法移民の一斉送還、そして自分を訴追した勢力に対する飽くなき報復を公言するなど、トランプ2.0に対してはアメリカのみならず世界中が戦々恐々としている。
トランプといえば、数々の差別発言や刑事裁判にもなっている数々の事件などのために、どうしてもトンデモ政治家とのイメージがついて回る。ジャーナリストでありアメリカ政治思想史の研究者でもある会田弘継氏は、再びトランプを選んだアメリカで起きている歴史的な変化を決して甘くみてはならないと警鐘を鳴らす。
なぜならば、トランプはアメリカの格差や分断、民主主義崩壊の原因ではなく、その結果に過ぎないからだと会田氏はいう。つまりトランプ現象というのは、トランプ自身が引き起こしたものではなく、アメリカの歴史の必然として早くは1970年代から燻っていたところに、たまたま究極のポピュリストであり世論を掴むことに天賦の才を持つドナルド・トランプというキワモノ的キャラクターが登場したというのが、会田氏の見立てなのだ。
それは今回の大統領選挙で民主党が負けた原因とも関係がある。本来は低所得層や労働者、少数民族の代弁者であったはずの民主党が、今やすっかり富裕層エリートのための政党になってしまった。そうした中で民主党から見捨てられ自分たちの代弁者を失ってしまったと感じる人々の怒りや絶望が新たな階級闘争に発展し、そのような分断状況を敏感に見て取ったトランプが見事なまでに不満層の支持を汲み上げることに成功し大統領選挙に勝利したのだと会田氏は言う。
その背景にはアメリカにおける産業構造の大転換がある。1970年代以降、アメリカの製造業は急速にサービス産業に転換していった。その過程で、アメリカの工場は次々と海外に移転し、工場で働いていた多くの人々が行き場を失うことになった。サービス業は、金融やITなど知識集約型のエリートと、宿泊・小売・運輸などエリートのために奉仕する低賃金労働の2極に分かれるが、学歴や特殊技能を持たないかつての工場労働者たちのほとんどは、後者の低賃金労働に就くしかなかった。いや、低賃金でも職にありつける人はまだましな方で、失業した人も多かった。彼らとエリートとの間には激しい貧富の格差が生じ、低所得層や失業者の間では日に日に不満が高まっていた。
かつての支持母体だった労働者が民主党から離れて徐々に共和党支持にシフトする中、民主党は1985年、民主党指導者会議(DLC)を設立し、労働者に依存せず金融やIT企業と手を結ぶ新たな方針を表明した。そこで民主党はニューディール以来の党のアイデンティティを放棄し、富裕層ばかりを見ている政党になってしまったと会田氏は言う。バーニー・サンダースのようにそうした民主党の変質に異を唱える勢力もあったが、民主党の指導層はそうした勢力の挑戦を退け、エリート路線を邁進していった。
新たに現出した階級闘争にいち早く気づき、不満層を取り込んでいったのがトランプでありトランプを担ぐ勢力だった。
しかし、もし共和党やトランプが階級闘争における弱者の味方になろうとしているのだとすれば、なぜトランプは女性や黒人や移民など弱い立場にいる人々に対する差別発言を繰り返すのか。会田氏は、トランプの一連の暴言はトランプ現象には不可欠の要素なのだと言う。その理由はこうだ。トランプに票を投じる人の多くは、女性や非白人やLGBTQの権利向上は、いずれもグローバルエリートが自分たちにとって都合のいい主張をしているだけだと受け止めている。それはシリコンバレーのIT企業やウォールストリートのグローバル企業が、世界中から高い教育を受けた人材を集める必要があるため、文化もジェンダー観も宗教観も全く違う人々にうまく折り合いをつけてもらう必要があるからだ。しかし、生まれた時から住み慣れた地元で働き、昔ながらの生活を守りたいと思っている人々にとって、エリートが上から目線でポリティカルコレクトネス(PC)を主張するのを見ても、偏った価値観の単なる押し付けにしか感じられない。トランプが人種やジェンダーや宗教などでともすれば極端に差別的ともとれる発言を繰り返すのは、こうした人々の違和感や疎外感を代弁するためであり、そうすることで彼らの不満を自分への支持につなげていこうという意図が隠されているのだと会田氏は言う。
だとすると、トランプ現象はもはや一過性のものではない。トランプを推すアメリカの保守思想家たちは、新しいアメリカの形についての議論を始めていると会田氏は言う。その中で例えばピーター・ティールのような新しいタイプの思想家は「われわれは空飛ぶ自動車の代わりに140語を得た」とし、製造業の発展ではなく、民主党の資金源にもなっている環境問題やITや金融業ばかりが発展し、X(旧ツイッター)に人々が振り回されている今のアメリカの発展の方向は間違っていると断じている。
トランプ自身は自分がそうした思想のシンボルになっていることをどこまで自覚できているかは疑問だが、ティールを信奉しているイーロン・マスクがトランプ陣営に莫大な資金を提供することでトランプ2.0の立役者となり、次期トランプ政権でも入閣することが確定的となった今、これまで放置されてきた労働者たちをこれからどうするのかは、アメリカにとっても大きな政治的課題となってくる可能性が高い。今後アメリカが製造業を再興させることで、ITや金融分野ばかりが歪に発展してきたアメリカの社会や経済の形が、今後大きく変わっていく可能性もあるし、そのような試みが大失敗に終わる可能性ももちろんある。
トランプはなぜ支持されるのか、その背景にはどのような歴史的・思想史的な流れがあるのか、次期トランプ政権はどのようなものになるのかなどについて、思想史家の会田弘継氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
前半はこちら→so44447177
(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
<マル激・前半>トランプのアメリカで起きている歴史的な変化を見誤ってはならない/会田弘継氏(ジャーナリスト・思想史家)
年が明けるとトランプ政権が始動する。既に関税の大幅引き上げや百万人単位の違法移民の一斉送還、そして自分を訴追した勢力に対する飽くなき報復を公言するなど、トランプ2.0に対してはアメリカのみならず世界中が戦々恐々としている。
トランプといえば、数々の差別発言や刑事裁判にもなっている数々の事件などのために、どうしてもトンデモ政治家とのイメージがついて回る。ジャーナリストでありアメリカ政治思想史の研究者でもある会田弘継氏は、再びトランプを選んだアメリカで起きている歴史的な変化を決して甘くみてはならないと警鐘を鳴らす。
なぜならば、トランプはアメリカの格差や分断、民主主義崩壊の原因ではなく、その結果に過ぎないからだと会田氏はいう。つまりトランプ現象というのは、トランプ自身が引き起こしたものではなく、アメリカの歴史の必然として早くは1970年代から燻っていたところに、たまたま究極のポピュリストであり世論を掴むことに天賦の才を持つドナルド・トランプというキワモノ的キャラクターが登場したというのが、会田氏の見立てなのだ。
それは今回の大統領選挙で民主党が負けた原因とも関係がある。本来は低所得層や労働者、少数民族の代弁者であったはずの民主党が、今やすっかり富裕層エリートのための政党になってしまった。そうした中で民主党から見捨てられ自分たちの代弁者を失ってしまったと感じる人々の怒りや絶望が新たな階級闘争に発展し、そのような分断状況を敏感に見て取ったトランプが見事なまでに不満層の支持を汲み上げることに成功し大統領選挙に勝利したのだと会田氏は言う。
その背景にはアメリカにおける産業構造の大転換がある。1970年代以降、アメリカの製造業は急速にサービス産業に転換していった。その過程で、アメリカの工場は次々と海外に移転し、工場で働いていた多くの人々が行き場を失うことになった。サービス業は、金融やITなど知識集約型のエリートと、宿泊・小売・運輸などエリートのために奉仕する低賃金労働の2極に分かれるが、学歴や特殊技能を持たないかつての工場労働者たちのほとんどは、後者の低賃金労働に就くしかなかった。いや、低賃金でも職にありつける人はまだましな方で、失業した人も多かった。彼らとエリートとの間には激しい貧富の格差が生じ、低所得層や失業者の間では日に日に不満が高まっていた。
かつての支持母体だった労働者が民主党から離れて徐々に共和党支持にシフトする中、民主党は1985年、民主党指導者会議(DLC)を設立し、労働者に依存せず金融やIT企業と手を結ぶ新たな方針を表明した。そこで民主党はニューディール以来の党のアイデンティティを放棄し、富裕層ばかりを見ている政党になってしまったと会田氏は言う。バーニー・サンダースのようにそうした民主党の変質に異を唱える勢力もあったが、民主党の指導層はそうした勢力の挑戦を退け、エリート路線を邁進していった。
新たに現出した階級闘争にいち早く気づき、不満層を取り込んでいったのがトランプでありトランプを担ぐ勢力だった。
しかし、もし共和党やトランプが階級闘争における弱者の味方になろうとしているのだとすれば、なぜトランプは女性や黒人や移民など弱い立場にいる人々に対する差別発言を繰り返すのか。会田氏は、トランプの一連の暴言はトランプ現象には不可欠の要素なのだと言う。その理由はこうだ。トランプに票を投じる人の多くは、女性や非白人やLGBTQの権利向上は、いずれもグローバルエリートが自分たちにとって都合のいい主張をしているだけだと受け止めている。それはシリコンバレーのIT企業やウォールストリートのグローバル企業が、世界中から高い教育を受けた人材を集める必要があるため、文化もジェンダー観も宗教観も全く違う人々にうまく折り合いをつけてもらう必要があるからだ。しかし、生まれた時から住み慣れた地元で働き、昔ながらの生活を守りたいと思っている人々にとって、エリートが上から目線でポリティカルコレクトネス(PC)を主張するのを見ても、偏った価値観の単なる押し付けにしか感じられない。トランプが人種やジェンダーや宗教などでともすれば極端に差別的ともとれる発言を繰り返すのは、こうした人々の違和感や疎外感を代弁するためであり、そうすることで彼らの不満を自分への支持につなげていこうという意図が隠されているのだと会田氏は言う。
だとすると、トランプ現象はもはや一過性のものではない。トランプを推すアメリカの保守思想家たちは、新しいアメリカの形についての議論を始めていると会田氏は言う。その中で例えばピーター・ティールのような新しいタイプの思想家は「われわれは空飛ぶ自動車の代わりに140語を得た」とし、製造業の発展ではなく、民主党の資金源にもなっている環境問題やITや金融業ばかりが発展し、X(旧ツイッター)に人々が振り回されている今のアメリカの発展の方向は間違っていると断じている。
トランプ自身は自分がそうした思想のシンボルになっていることをどこまで自覚できているかは疑問だが、ティールを信奉しているイーロン・マスクがトランプ陣営に莫大な資金を提供することでトランプ2.0の立役者となり、次期トランプ政権でも入閣することが確定的となった今、これまで放置されてきた労働者たちをこれからどうするのかは、アメリカにとっても大きな政治的課題となってくる可能性が高い。今後アメリカが製造業を再興させることで、ITや金融分野ばかりが歪に発展してきたアメリカの社会や経済の形が、今後大きく変わっていく可能性もあるし、そのような試みが大失敗に終わる可能性ももちろんある。
トランプはなぜ支持されるのか、その背景にはどのような歴史的・思想史的な流れがあるのか、次期トランプ政権はどのようなものになるのかなどについて、思想史家の会田弘継氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
後半はこちら→so44447373
(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
<マル激・後半>「日本病」による失われた30年をいかに取り戻すか/永濱利廣氏(第一生命経済研究所首席エコノミスト)
見事なまでに経済が成長しないまま30年の月日が過ぎる間に、日本は先進国のみならず新興国にも経済的に抜かれ始め、1990年代の世界トップの経済大国から今や先進国の地位さえも失おうかというところまで転落している。
なぜこのような事態に陥ったのか。いや、より深刻なのは、なぜそのような状態からいつまでたっても抜け出すことができないのか。
かつてパックス・ブリタニカの名を戴き、何世紀にもわたり世界の盟主として君臨しながら、1960年代以降、経済が停滞し、世界の盟主としての地位を失ったイギリスの状態は「イギリス病」と呼ばれた。それは主に「ゆりかごから墓場まで」で知られ世界の垂涎の的だった社会保障の肥大化に起因する経済不調だった。しかし、1990年代から30年の間に世界のトップから先進国の地位から転落するところまで落ち続けた日本の状況も、世界では今、「日本病」(Japanification)と呼ばれるようになっている。要するに世界の多くの国にとって日本は反面教師であり、「われわれはああはならないようにしましょうね」という、わかりやすい失政の実例になっているというのだ。
第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏は、著書『日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか』の中で、日本病とは低所得・低物価・低金利・低成長の「4低」が続く状況のことだとしている。
そもそも日本が長期にわたる日本病に陥った最初のきっかけは、バブル崩壊後の政策上の失敗だったと永濱氏は指摘する。まず、日銀が金融緩和に着手するのが遅かった。バブル崩壊が始まった1990年初頭から日銀が利下げに転じるまで1年半、さらにゼロ金利に下げるまでには9年もかかっており、その間に日本はデフレに陥り、国民の間にデフレマインドが定着してしまった。経済が不況になると財政状況も悪くなり、取れる政策の選択肢も狭まってしまった。
バブル崩壊で資産価格が下がったために、日本、とりわけ金融機関は大量の不良債権を抱えることとなった。しかし政府・日銀が迅速な金融緩和や財政出動で経済をテコ入れし落ち込んだ資産価格を引き上げることをしないまま不良債権処理を優先したことで、ますます経済が傷んでしまった。これは明らかに政策的なミスだったと永濱氏は言う。
また、バブル後の初動で失敗した上に、日本は長らく経済低迷下にあっても、財政規律を重んじる財務省の抵抗で、思い切った財政出動ができなかった。更に、財政出動をしても、補助金や助成金で既得権益セクターを支えるばかりで、イノベーションを引き起こす新規産業への投資はほとんど行えなかった。明らかに指導層にそのための知恵や歴史観が足りなかったのだ。
どこの国でも財務当局というのは財政規律を重んじる傾向がある。しかし、それでも他の先進国は必要とあらば大胆な財政出動を行ってきた。しかし、日本は官僚に対して政治の力が弱いため、財政規律を重んじる財務省の抵抗を政治の力で乗り越えることができなかったと永濱氏は指摘する。
また、更に遡ると、日本のバブルは1985年のプラザ合意で突如として円高を受け入れざるを得なくなり、そこから日本は一気に内需拡大に舵を切ったところにその遠因があった。その意味で、日本の失われた30年の発端となったバブル処理の失敗の背景には、日本の政治が霞ヶ関にもアメリカにも抗えないという、何とも情けない問題があったということだ。
しかし、日本病の発症の原因がそこにあったとしても、なぜ日本はその後30年もの間、そこから抜け出せないでいるのか。永濱氏は日本の経済停滞がある程度続いた結果、国民の間にデフレマインドが広がってしまったことにその原因があると指摘する。今、日本は世界的な資源価格の高騰と日米金利差に起因する円安によって、物価が上がり、事実上のインフレ状態になっている。しかし、にもかかわらず、国民がデフレマインドから脱却できていないため、物価が上がる局面になっても、もっと高くなる前に買っておこうではなく、できるだけ節約して再び物価が下がるのを待とうと考えるようになってしまった。一度良い生活を経験してしまうと元の生活水準に戻れなくなることをラチェット効果というが、長期にわたるデフレのせいで、消費を抑えて節約しても生活できると思ってしまう逆ラチェット効果が起きていると永濱氏はいう。
今の状況を打開するためには、とにかく個人消費を活性化させる必要がある。その方法の一例として永濱氏は韓国のキャッシュレス決済の所得控除のような、お金を使った人が得をするような政策を打つ必要性を唱える。韓国は物を買うときにキャッシュレスで決済をすると、税金の控除を受けられるような仕組みを導入し、消費の活性化に成功したという。日本ももっと消費を喚起する施策を実施する必要がある。
日本でも先月、石破政権が経済対策を発表しているが、相変わらず電気・ガスやガソリンの補助金、住民税非課税世帯への給付など、一時的な補助金や給付など旧態依然たる施策が多い。永濱氏によると、それでは事業規模だけは39兆円と金額を積み上げている割には消費刺激の効果は薄いのではないかと言う。
そもそも日本はなぜ日本病に陥ったのか、日本病から脱却するために誰が何をしなければならないのか。なぜいつまでたっても日本の政治は必要な施策を実行することができないのかなどについて、第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
前半はこちら→so44425366
(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
<マル激・前半>「日本病」による失われた30年をいかに取り戻すか/永濱利廣氏(第一生命経済研究所首席エコノミスト)
見事なまでに経済が成長しないまま30年の月日が過ぎる間に、日本は先進国のみならず新興国にも経済的に抜かれ始め、1990年代の世界トップの経済大国から今や先進国の地位さえも失おうかというところまで転落している。
なぜこのような事態に陥ったのか。いや、より深刻なのは、なぜそのような状態からいつまでたっても抜け出すことができないのか。
かつてパックス・ブリタニカの名を戴き、何世紀にもわたり世界の盟主として君臨しながら、1960年代以降、経済が停滞し、世界の盟主としての地位を失ったイギリスの状態は「イギリス病」と呼ばれた。それは主に「ゆりかごから墓場まで」で知られ世界の垂涎の的だった社会保障の肥大化に起因する経済不調だった。しかし、1990年代から30年の間に世界のトップから先進国の地位から転落するところまで落ち続けた日本の状況も、世界では今、「日本病」(Japanification)と呼ばれるようになっている。要するに世界の多くの国にとって日本は反面教師であり、「われわれはああはならないようにしましょうね」という、わかりやすい失政の実例になっているというのだ。
第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏は、著書『日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか』の中で、日本病とは低所得・低物価・低金利・低成長の「4低」が続く状況のことだとしている。
そもそも日本が長期にわたる日本病に陥った最初のきっかけは、バブル崩壊後の政策上の失敗だったと永濱氏は指摘する。まず、日銀が金融緩和に着手するのが遅かった。バブル崩壊が始まった1990年初頭から日銀が利下げに転じるまで1年半、さらにゼロ金利に下げるまでには9年もかかっており、その間に日本はデフレに陥り、国民の間にデフレマインドが定着してしまった。経済が不況になると財政状況も悪くなり、取れる政策の選択肢も狭まってしまった。
バブル崩壊で資産価格が下がったために、日本、とりわけ金融機関は大量の不良債権を抱えることとなった。しかし政府・日銀が迅速な金融緩和や財政出動で経済をテコ入れし落ち込んだ資産価格を引き上げることをしないまま不良債権処理を優先したことで、ますます経済が傷んでしまった。これは明らかに政策的なミスだったと永濱氏は言う。
また、バブル後の初動で失敗した上に、日本は長らく経済低迷下にあっても、財政規律を重んじる財務省の抵抗で、思い切った財政出動ができなかった。更に、財政出動をしても、補助金や助成金で既得権益セクターを支えるばかりで、イノベーションを引き起こす新規産業への投資はほとんど行えなかった。明らかに指導層にそのための知恵や歴史観が足りなかったのだ。
どこの国でも財務当局というのは財政規律を重んじる傾向がある。しかし、それでも他の先進国は必要とあらば大胆な財政出動を行ってきた。しかし、日本は官僚に対して政治の力が弱いため、財政規律を重んじる財務省の抵抗を政治の力で乗り越えることができなかったと永濱氏は指摘する。
また、更に遡ると、日本のバブルは1985年のプラザ合意で突如として円高を受け入れざるを得なくなり、そこから日本は一気に内需拡大に舵を切ったところにその遠因があった。その意味で、日本の失われた30年の発端となったバブル処理の失敗の背景には、日本の政治が霞ヶ関にもアメリカにも抗えないという、何とも情けない問題があったということだ。
しかし、日本病の発症の原因がそこにあったとしても、なぜ日本はその後30年もの間、そこから抜け出せないでいるのか。永濱氏は日本の経済停滞がある程度続いた結果、国民の間にデフレマインドが広がってしまったことにその原因があると指摘する。今、日本は世界的な資源価格の高騰と日米金利差に起因する円安によって、物価が上がり、事実上のインフレ状態になっている。しかし、にもかかわらず、国民がデフレマインドから脱却できていないため、物価が上がる局面になっても、もっと高くなる前に買っておこうではなく、できるだけ節約して再び物価が下がるのを待とうと考えるようになってしまった。一度良い生活を経験してしまうと元の生活水準に戻れなくなることをラチェット効果というが、長期にわたるデフレのせいで、消費を抑えて節約しても生活できると思ってしまう逆ラチェット効果が起きていると永濱氏はいう。
今の状況を打開するためには、とにかく個人消費を活性化させる必要がある。その方法の一例として永濱氏は韓国のキャッシュレス決済の所得控除のような、お金を使った人が得をするような政策を打つ必要性を唱える。韓国は物を買うときにキャッシュレスで決済をすると、税金の控除を受けられるような仕組みを導入し、消費の活性化に成功したという。日本ももっと消費を喚起する施策を実施する必要がある。
日本でも先月、石破政権が経済対策を発表しているが、相変わらず電気・ガスやガソリンの補助金、住民税非課税世帯への給付など、一時的な補助金や給付など旧態依然たる施策が多い。永濱氏によると、それでは事業規模だけは39兆円と金額を積み上げている割には消費刺激の効果は薄いのではないかと言う。
そもそも日本はなぜ日本病に陥ったのか、日本病から脱却するために誰が何をしなければならないのか。なぜいつまでたっても日本の政治は必要な施策を実行することができないのかなどについて、第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
後半はこちら→so44425367
(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
【後半会員限定パート】樋口英明氏生出演!『原発を止めた裁判官が語る“原発の危険性”と“原発と司法”』(2024年12月2日放送)
今年2024年は…10月に女川原発2号機が再稼働(11月4日に停止し、12月に再び稼働予定)、12月7日に島根原発2号機が再稼働予定、また10月に原子力規制委員会が、運転開始から50年を迎える高浜原発(関西電力)1号機の今後10年間の保安規定の変更を認可するなど、原発再稼働ラッシュイヤーとなった。
が、果たして原発の安全は確保されたのか―?
2014年5月21日福井地方裁判所において、裁判長として大飯原発の運転差し止め判決を出した樋口英明氏をゲストに迎え、“原発の危険性”と“原発と司法”などを語り、深掘りする。
本配信は原発再稼働・推進に舵を切った“保守政権”それを支持する“保守”への挑戦でもある。
■参考テキスト:『原発を止めた裁判官による 保守のための原発入門』(岩波書店)
https://www.iwanami.co.jp/book/b649628.html
●日時:12月2日(月)20時から生配信
●ゲスト:樋口英明(元判事)
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
【前半無料パート】樋口英明氏生出演!『原発を止めた裁判官が語る“原発の危険性”と“原発と司法”』(2024年12月2日放送)
今年2024年は…10月に女川原発2号機が再稼働(11月4日に停止し、12月に再び稼働予定)、12月7日に島根原発2号機が再稼働予定、また10月に原子力規制委員会が、運転開始から50年を迎える高浜原発(関西電力)1号機の今後10年間の保安規定の変更を認可するなど、原発再稼働ラッシュイヤーとなった。
が、果たして原発の安全は確保されたのか―?
2014年5月21日福井地方裁判所において、裁判長として大飯原発の運転差し止め判決を出した樋口英明氏をゲストに迎え、“原発の危険性”と“原発と司法”などを語り、深掘りする。
本配信は原発再稼働・推進に舵を切った“保守政権”それを支持する“保守”への挑戦でもある。
■参考テキスト:『原発を止めた裁判官による 保守のための原発入門』(岩波書店)
https://www.iwanami.co.jp/book/b649628.html
●日時:12月2日(月)20時から生配信
●ゲスト:樋口英明(元判事)
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
【前半無料パート】西 愛礼弁護士出演!『人質司法を深掘りする!』(2024年11月21日)
東京五輪をめぐる汚職事件で贈賄罪に問われた前KADOKAWA会長の角川歴彦氏は、無罪を訴えたうえで「『人質司法』で人権と尊厳を侵害された」と公判で主張している。
身体拘束を長期間続け、密室での自白を迫る「人質司法」について、<角川人質司法違憲訴訟>の弁護団の一人、西 愛礼弁護士をゲストに迎え、同訴訟を紹介しながら「人質司法」について深掘りする。
■参考テキスト①:角川歴彦『人間の証明 勾留226日と私の生存権について』(リトル・モア社)
https://littlemore.co.jp/isbn9784898155882
■参考テキスト②:西愛礼『冤罪 なぜ人は間違えるのか』(インターナショナル新書)
https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-7976-8151-2
●日時:11月21日(木)20時から生配信
●ゲスト:西 愛礼(弁護士) https://x.com/YoshiyukiNishi_
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
【前半無料パート】西 愛礼弁護士出演!『人質司法を深掘りする!』(2024年11月21日)
東京五輪をめぐる汚職事件で贈賄罪に問われた前KADOKAWA会長の角川歴彦氏は、無罪を訴えたうえで「『人質司法』で人権と尊厳を侵害された」と公判で主張している。
身体拘束を長期間続け、密室での自白を迫る「人質司法」について、<角川人質司法違憲訴訟>の弁護団の一人、西 愛礼弁護士をゲストに迎え、同訴訟を紹介しながら「人質司法」について深掘りする。
■参考テキスト①:角川歴彦『人間の証明 勾留226日と私の生存権について』(リトル・モア社)
https://littlemore.co.jp/isbn9784898155882
■参考テキスト②:西愛礼『冤罪 なぜ人は間違えるのか』(インターナショナル新書)
https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-7976-8151-2
●日時:11月21日(木)20時から生配信
●ゲスト:西 愛礼(弁護士) https://x.com/YoshiyukiNishi_
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
【後半会員限定パート】安田峰俊氏出演! 『中国ぎらいのための中国史!』(2024年11月11日放送)
ゲストは紀実作家・安田峰俊氏。
内閣府が発表した令和5年の「外交に関する世論調査」によると、中国に「親しみを感じない」「どちらかというと親しみを感じない」人は86.7%にのぼるとのこと。
一方で、日本には『キングダム』など中国史がテーマの漫画が多数あり、そして人気を博している。
この状況をゲストの安田氏は、「日本人の大部分は、古典の世界の中国と、現実の中国を<別物>だとみなしている」と近著の中で述べている。
ただ、安田氏は「中国は、現在もなお歴史と接続し、歴史で動いている」としている。
つまり、日本人にとって<親しみを感じない現在の中国>、具体的には習近平体制を知るには、中国の歴史を知ることが不可欠ということになる。
今回の配信では、現代の中国、習近平体制を知るための中国史をわかり易く紹介・解説する。
<温故知新>。
中国史を知り、現在の中国を理解するスペシャルな配信、是非ご覧ください。
■参考テキスト:『中国ぎらいのための中国史』(PHP新書)
https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-85778-7
●日時:11月11日(月)20時から生配信
●ゲスト:安田峰俊(紀実作家)
●出演:古谷経衡(作家・評論家)
●司会:ジョー横溝
【前半無料パート】安田峰俊氏出演! 『中国ぎらいのための中国史!』(2024年11月11日放送)
ゲストは紀実作家・安田峰俊氏。
内閣府が発表した令和5年の「外交に関する世論調査」によると、中国に「親しみを感じない」「どちらかというと親しみを感じない」人は86.7%にのぼるとのこと。
一方で、日本には『キングダム』など中国史がテーマの漫画が多数あり、そして人気を博している。
この状況をゲストの安田氏は、「日本人の大部分は、古典の世界の中国と、現実の中国を<別物>だとみなしている」と近著の中で述べている。
ただ、安田氏は「中国は、現在もなお歴史と接続し、歴史で動いている」としている。
つまり、日本人にとって<親しみを感じない現在の中国>、具体的には習近平体制を知るには、中国の歴史を知ることが不可欠ということになる。
今回の配信では、現代の中国、習近平体制を知るための中国史をわかり易く紹介・解説する。
<温故知新>。
中国史を知り、現在の中国を理解するスペシャルな配信、是非ご覧ください。
■参考テキスト:『中国ぎらいのための中国史』(PHP新書)
https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-85778-7
●日時:11月11日(月)20時から生配信
●ゲスト:安田峰俊(紀実作家)
●出演:古谷経衡(作家・評論家)
●司会:ジョー横溝
<マル激・後半>マイナ保険証の根本的な問題は何一つ解決されていない/小島延夫氏(弁護士)
マイナ保険証の本格運用が始まった。しかし、根本的な問題は何一つ解決されていない。
12月2日をもって紙の健康保険証の新規発行が停止となり、マイナ保険証に移行することになった。いつの間にか、皆保険制度のベースとなる健康保険証が、任意取得のはずのマイナンバーカードに一本化されようとしている。
現行の保険証も最大1年間はそのまま使い続けることができるが、これから1年の間に、各人の持つ保険証の有効期限が切れ始める。マイナ保険証の登録をしていない人や高齢者には「資格確認書」という保険証とそっくりなものが、市区町村や各健康保険組合から送られてくることになっているが、既にマイナ保険証を登録した人は、登録を解除しない限り、基本的にマイナ保険証を利用せざるをえなくなる。
マイナ保険証は、医療機関を受診するたびに窓口でそれを提示して、医療機関が設置したカードリーダーに読み込ませなくてはならない。その際は顔認証を使うか、暗証番号を入力しなければならない。健康でこうしたカードの扱いに慣れている人にとっては何でもないことかもしれないが、障害があったり病気だったりしてカードリーダーをうまく操作ができなければ、さまざまなトラブルが起きる。車いすユーザーは受付台の上に置かれたカードリーダーでの顔認証は難しいし、発熱があり感染症の疑いがある場合はどうするのだろう。
そもそもマイナンバーという秘密情報が記載されたカードを持ち歩くことは想定されていなかったはずで、それを本人確認用に使うということ自体が大きな矛盾であり問題だと、行政法が専門の小島延夫弁護士は主張する。
しかも、マイナ保険証の導入や現行保険証の廃止が、十分に議論された上で決まったことなのかどうかも怪しい。
保険証廃止の方針は岸田政権下の2022年10月に閣議決定された。翌年の4月には、保険診療を行う医療機関にオンラインによる資格確認が義務付けられたが、この決定は国会での審議議論を経た法律の改正という形ではなく、厚労省が内部的に決められる省令によるものだ。その後、マイナンバーカードの紐づけのトラブルなどが多く報道されたことも記憶に新しいはずだ。
マイナ保険証のメリットとして政府が繰り返し伝えているのは、患者が情報提供の同意をすれば、これまで受けた診療の内容や薬の履歴などがわかるので、結果的に医療の質の向上が期待できるという点だ。しかし、それを実現するためになぜマイナンバーカードと保険証を一体化させる必要があるのか、その議論も十分とは言えないと小島氏はいう。
逆に、医療情報というセンシティブな情報は保護されるべきものであって、現在のマイナ保険証利用の際の同意取得の方法は極めて不適切であり、日本も認定を受けているEUのGDPR(一般データ保護規則)にも抵触する可能性があると、小島氏は指摘する。
こうした根本的な問題を解決しないまま、この12月からマイナ保険証の本格運用が始まったわけだが、今後マイナ保険証はどうなっていくのだろうか。
保険証そっくりの資格確認書は現行の保険証と異なり、各保険者に発行が義務付けられているわけではない。また、マイナンバーカードの電子証明書は5年で更新手続きが必要になる。いざ病気やけがで医療にかからなくてはならなくなったときに、資格確認書を持っていなかったり、マイナンバーカードの期限が切れていたりすれば、結果的に本人確認ができず、保険医療が受けられないというトラブルがいつ起きてもおかしくない。ひとたび医療情報の漏洩が起きれば、取返しのつかない問題となるおそれもある。
法的には任意であるマイナンバーカードの普及を進めるために、誰もが必要としている保険証とマイナンバーカードを無理矢理結びつける政府の手法に果たして正当性はあるのか。その強権的な手法はどのような問題を孕んでいて、今度どのような問題を生み出す恐れがあるのか。この問題を契機に10数人の弁護士と「地方自治と地域医療を守る会」を立ち上げた小島延夫氏と、社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が議論した。
前半はこちら→so44402628
(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
<マル激・前半>マイナ保険証の根本的な問題は何一つ解決されていない/小島延夫氏(弁護士)
マイナ保険証の本格運用が始まった。しかし、根本的な問題は何一つ解決されていない。
12月2日をもって紙の健康保険証の新規発行が停止となり、マイナ保険証に移行することになった。いつの間にか、皆保険制度のベースとなる健康保険証が、任意取得のはずのマイナンバーカードに一本化されようとしている。
現行の保険証も最大1年間はそのまま使い続けることができるが、これから1年の間に、各人の持つ保険証の有効期限が切れ始める。マイナ保険証の登録をしていない人や高齢者には「資格確認書」という保険証とそっくりなものが、市区町村や各健康保険組合から送られてくることになっているが、既にマイナ保険証を登録した人は、登録を解除しない限り、基本的にマイナ保険証を利用せざるをえなくなる。
マイナ保険証は、医療機関を受診するたびに窓口でそれを提示して、医療機関が設置したカードリーダーに読み込ませなくてはならない。その際は顔認証を使うか、暗証番号を入力しなければならない。健康でこうしたカードの扱いに慣れている人にとっては何でもないことかもしれないが、障害があったり病気だったりしてカードリーダーをうまく操作ができなければ、さまざまなトラブルが起きる。車いすユーザーは受付台の上に置かれたカードリーダーでの顔認証は難しいし、発熱があり感染症の疑いがある場合はどうするのだろう。
そもそもマイナンバーという秘密情報が記載されたカードを持ち歩くことは想定されていなかったはずで、それを本人確認用に使うということ自体が大きな矛盾であり問題だと、行政法が専門の小島延夫弁護士は主張する。
しかも、マイナ保険証の導入や現行保険証の廃止が、十分に議論された上で決まったことなのかどうかも怪しい。
保険証廃止の方針は岸田政権下の2022年10月に閣議決定された。翌年の4月には、保険診療を行う医療機関にオンラインによる資格確認が義務付けられたが、この決定は国会での審議議論を経た法律の改正という形ではなく、厚労省が内部的に決められる省令によるものだ。その後、マイナンバーカードの紐づけのトラブルなどが多く報道されたことも記憶に新しいはずだ。
マイナ保険証のメリットとして政府が繰り返し伝えているのは、患者が情報提供の同意をすれば、これまで受けた診療の内容や薬の履歴などがわかるので、結果的に医療の質の向上が期待できるという点だ。しかし、それを実現するためになぜマイナンバーカードと保険証を一体化させる必要があるのか、その議論も十分とは言えないと小島氏はいう。
逆に、医療情報というセンシティブな情報は保護されるべきものであって、現在のマイナ保険証利用の際の同意取得の方法は極めて不適切であり、日本も認定を受けているEUのGDPR(一般データ保護規則)にも抵触する可能性があると、小島氏は指摘する。
こうした根本的な問題を解決しないまま、この12月からマイナ保険証の本格運用が始まったわけだが、今後マイナ保険証はどうなっていくのだろうか。
保険証そっくりの資格確認書は現行の保険証と異なり、各保険者に発行が義務付けられているわけではない。また、マイナンバーカードの電子証明書は5年で更新手続きが必要になる。いざ病気やけがで医療にかからなくてはならなくなったときに、資格確認書を持っていなかったり、マイナンバーカードの期限が切れていたりすれば、結果的に本人確認ができず、保険医療が受けられないというトラブルがいつ起きてもおかしくない。ひとたび医療情報の漏洩が起きれば、取返しのつかない問題となるおそれもある。
法的には任意であるマイナンバーカードの普及を進めるために、誰もが必要としている保険証とマイナンバーカードを無理矢理結びつける政府の手法に果たして正当性はあるのか。その強権的な手法はどのような問題を孕んでいて、今度どのような問題を生み出す恐れがあるのか。この問題を契機に10数人の弁護士と「地方自治と地域医療を守る会」を立ち上げた小島延夫氏と、社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が議論した。
後半はこちら→so44402667
(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
【後半会員限定パート】町山智浩氏生出演!『大統領選総括と選挙後の米社会を深掘りする』(2024年11月13日放送)
●日時:11月13日(水)20時から生配信
●ゲスト:町山智浩(映画評論家)
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
【前半無料パート】町山智浩氏生出演!『大統領選総括と選挙後の米社会を深掘りする』(2024年11月13日放送)
●日時:11月13日(水)20時から生配信
●ゲスト:町山智浩(映画評論家)
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
【後半会員限定パート】宮台真司自伝発売記念!「これが学者の人生か⁉ “困った”天才社会学者の半生を深掘りする」(10月24日放送)
番組レギュラー出演者・宮台真司の自伝発売記念配信!! ゲストに自伝のインタビューをつとめた近田春夫氏を迎え、 “困った”天才社会学者・宮台真司の半生を深掘りします!
■テキスト:宮台真司 近田春夫著『聖と俗 対話による宮台真司クロニクル』(KKベストセラーズ)
●日時:10月24日(木)20時から生配信
●ゲスト:近田春夫(音楽家)
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
【前半無料パート】宮台真司自伝発売記念!「これが学者の人生か⁉ “困った”天才社会学者の半生を深掘りする」(10月24日放送)
番組レギュラー出演者・宮台真司の自伝発売記念配信!! ゲストに自伝のインタビューをつとめた近田春夫氏を迎え、 “困った”天才社会学者・宮台真司の半生を深掘りします!
■テキスト:宮台真司 近田春夫著『聖と俗 対話による宮台真司クロニクル』(KKベストセラーズ)
●日時:10月24日(木)20時から生配信
●ゲスト:近田春夫(音楽家)
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
【後半メンバーシップ限定パート】哲学者・仲正昌樹と考える「ネットリンチが当たり前の社会はどうなるか?」(2024年10月7日放送)
哲学者・仲正昌樹氏が番組初登場。
仲正氏の新刊『ネットリンチが当たり前の社会はどうなるか?』をテキストに深掘りします。
■参考テキスト:仲正昌樹著『ネットリンチが当たり前の社会はどうなるか?』(KKベストセラーズ)
https://amzn.asia/d/54kIrJV
●日時:10月7日(月)20時から生放送
●ゲスト:仲正昌樹(哲学者)
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
【前半無料パート】哲学者・仲正昌樹と考える「ネットリンチが当たり前の社会はどうなるか?」(2024年10月7日放送)
哲学者・仲正昌樹氏が番組初登場。
仲正氏の新刊『ネットリンチが当たり前の社会はどうなるか?』をテキストに深掘りします。
■参考テキスト:仲正昌樹著『ネットリンチが当たり前の社会はどうなるか?』(KKベストセラーズ)
https://amzn.asia/d/54kIrJV
●日時:10月7日(月)20時から生放送
●ゲスト:仲正昌樹(哲学者)
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
【後半会員限定パート】小塩真司氏生出演!「『性格がわるい』とはどういうことかを深掘りする」(2024年9月19日放送)
■参考テキスト:小塩真司著『「性格が悪い」とはどういうことか——ダークサイドの心理学』(ちくま新書)
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480076311/
●日時:9月19日(木)21時から生配信
●ゲスト:小塩真司(心理学者)
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
【無料前半パート】小塩真司氏生出演!「『性格がわるい』とはどういうことかを深掘りする」(2024年9月19日放送)
■参考テキスト:小塩真司著『「性格が悪い」とはどういうことか——ダークサイドの心理学』(ちくま新書)
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480076311/
●日時:9月19日(木)21時から生配信
●ゲスト:小塩真司(心理学者)
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
【後半会員限定パート】ニコ生復活記念:町山智浩氏出演!「大統領選とアメリカの現在」(2024年9月10日放送)
共和党・トランプ氏の圧勝に終わったアメリカ大統領選挙の総括、発足を控えるトランプ政権の全貌と、選挙後のアメリカ社会を深掘りします。
また注目が集まるイーロン・マスク氏について、さらにマスク氏が掲げる<ダークMAGA>についても深掘りします!!
●日時:11月13日(水)20時から生配信
●ゲスト:町山智浩(映画評論家)
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
【無料前半パート】ニコ生復活記念:町山智浩氏出演!「大統領選とアメリカの現在」(2024年9月10日放送)
共和党・トランプ氏の圧勝に終わったアメリカ大統領選挙の総括、発足を控えるトランプ政権の全貌と、選挙後のアメリカ社会を深掘りします。
また注目が集まるイーロン・マスク氏について、さらにマスク氏が掲げる<ダークMAGA>についても深掘りします!!
●日時:11月13日(水)20時から生配信
●ゲスト:町山智浩(映画評論家)
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
<マル激・後半>5金スペシャル・不条理だらけの世界を当たり前としない生き方のすすめ
月の5回目の金曜日に特別企画を無料でお届けする5金スペシャル。今回は映画特集をお送りする。
今回取り上げた映画やドラマは次の7作品。どれも、多くの人が自明だと信じて疑わない社会の「当たり前」に疑問を投げかける秀作だ。
・『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(アレックス・ガーランド監督)
・『ザ・ディプロマット』(リザ・ジョンソン、サイモン・セラン・ジョーンズ監督)
・『ラストマイル』(塚原あゆ子監督)
・『哀れなるものたち』(ヨルゴス・ランティモス監督)
・『憐れみの3章』(ヨルゴス・ランティモス監督)
・『トナカイは殺されて』(エレ・マリア・エイラ監督)
・『ロスト・チルドレン』(オーランド・ボン・アインシーデル監督)
『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は、内戦状態のアメリカで取材に奔走するジャーナリストたちを描いている。ジャーナリストたちは戦場で命を危険に晒されながらも、前線に近づくにつれむしろ生き生きとし、高揚感に心を震わせる。映画は「そんなに戦争がしたいならすればいいではないか」と唆すようだが、それは、戦争をすれば破滅に向かうだけだが本当にそれでよいのかと問うメッセージの裏返しでもある。今の平和が当たり前ではないという現実を、平和ボケしたわれわれに突きつける。
ドラマシリーズ『ザ・ディプロマット』は、イギリスの保守派がスコットランドの独立を阻止すべく画策した自作自演の戦艦爆破事件を巡り、米、英、ロシア、イランとの外交と米英両国の国内権力闘争が交錯するさまをスリリングに描く。誰が本当の味方で誰が本当の敵なのか分からなくなる、今日の世界の政治状況が投影される。
『ラストマイル』はグローバル化された物流サービスとその下で過酷な労働環境で働かされている運送業の労働者、そしてアメリカ本社からの指示を受けてそれを差配する日本人幹部達が抱える葛藤などが描かれている。しかし、荷物を届ける物流の最後の区間であるラストマイルに携わる人々に過大な負担をかけている張本人は物流会社幹部ではなく、即配サービスを当たり前のように利用しているわれわれエンドユーザーであるという現実も浮かび上がる。頼んだ翌日に物が届くことが当たり前になった世の中を維持するために、どこに負担のしわ寄せが集まっているかをあらためて考えさせられる。
『哀れなるものたち』と『憐れみの3章』はギリシャ出身のヨルゴス・ランティモス監督のギリシャ悲劇を現代風にアレンジした作品。『哀れなるものたち』は、赤ちゃんの脳を移植された女性が成長していく物語。社会の仕組みを何も知らない状態の赤ちゃんが取る奇想天外な行動は、われわれが当たり前と思っていることには実はほとんど何の意味もないことを思い知らされる。
『憐れみの3章』は、上司のおじいさんに人生の全てを支配される男、自分の妻を偽物ではないかと疑う男、死者を蘇らせる力を持った女性を探す女という3つの物語からなる。服従や自己犠牲、妄信という欲望に翻弄される人々が描かれており、人間の本質とは何かを問う作品だ。
狩猟民族の少女が主人公の『トナカイは殺されて』には、差別する定住民と差別される非定住民の対立が描かれている。日々狩猟採集を行い、移動しながら生き生きと生活する非定住民を見れば、定住民の生活がいかにつまらないものかがよく分かる。
『ロスト・チルドレン』は飛行機事故によりアマゾン密林で行方不明になった子どもを捜索するドキュメンタリー。GPSを使っても見つからなかった機体を先住民の子どもは見つけることができた。多くの日本人が信じる近代的な合理性より、先住民の合理性の方が正しいことを示している。
複雑化した社会でわれわれが当たり前だと思っていることがいかにでたらめなのか。7つの映画作品についてジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
なお、番組の冒頭では、政治資金収支報告書のデータベース化の現状について議論した。
石破首相は29日、臨時国会で所信表明演説を行い、政治資金収支報告書の内容を誰でも簡単に確認できるデータベースの構築の議論を進めると述べた。しかし党内には政治資金の収支がすべてガラス張りにされることに対する抵抗が早くも始まっている。その切り札が「個人のプライバシー」を言い訳に、データベース化される情報の範囲をできるだけ狭くしようという動きになって現れている。26日に行われた政治改革に関する与野党7党の協議の場で、自民党の・政治改革本部長を務める渡海紀三朗衆院議員はデータベース化される対象を政党本部と国会議員関係団体に限定する意向を表明している。
そもそも政治資金収支報告書は今もPDFでウェブ公開され、そこには個人寄付者の名前もすべて公表されている。しかし、それがデータ化されていないために検索やソート(並び替え)などが容易にできず、それが結果的に膨大なページ数にのぼる政治資金収支報告書を詳細にチェックすることを事実上不可能にしている。単に、これまでPDFで公開されてきた情報をデータ化し、データベースを構築することで検索が可能な状態にすることが、石破首相が28日の所信表明演説で明言した「誰でも確認ができる」政治資金収支報告書のデータベース化の要諦であることを忘れてはならないだろう。
それをなし崩し的に無力化しようとする抵抗勢力の巻き返しには、今後も目を光らせていく必要がある。
前半はこちら→so44378487
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【後半会員限定パート】宮台真司出演!「当代一ヤバい社会学者・宮台真司を徹底解剖!」(2024年10月30日放送)
ゲストは・・・当代一ヤバい社会学者・宮台真司氏。
宮台氏の新刊にして初の自伝『聖と俗 対話による宮台真司クロニクル』を紹介しながら、当代一ヤバい作家・古谷経衡が宮台真司氏を徹底解剖します!
ヤバい同士対談、予測不能なヤバい内容になること必至!?
■参考テキスト:宮台真司 近田春夫著『聖と俗 対話による宮台真司クロニクル』(KKベストセラーズ)
●日時:10月30日(水)20時から生配信
●ゲスト:宮台真司(社会学者)
●出演:古谷経衡(作家・評論家)
●司会:ジョー横溝
【前半無料パート】宮台真司出演!「当代一ヤバい社会学者・宮台真司を徹底解剖!」(2024年10月30日放送)
ゲストは・・・当代一ヤバい社会学者・宮台真司氏。
宮台氏の新刊にして初の自伝『聖と俗 対話による宮台真司クロニクル』を紹介しながら、当代一ヤバい作家・古谷経衡が宮台真司氏を徹底解剖します!
ヤバい同士対談、予測不能なヤバい内容になること必至!?
■参考テキスト:宮台真司 近田春夫著『聖と俗 対話による宮台真司クロニクル』(KKベストセラーズ)
●日時:10月30日(水)20時から生配信
●ゲスト:宮台真司(社会学者)
●出演:古谷経衡(作家・評論家)
●司会:ジョー横溝
<マル激・前半>違憲のハンセン病療養所「特別法廷」判決が揺るがす死刑制度の正当性 /徳田靖之氏(弁護士、菊池事件弁護団共同代表)
日本の死刑制度の是非が問われる事態が相次いでいる。
先月、死刑判決を受けていた袴田巌さんの再審無罪が確定したのに続き、今月13日には「日本の死刑制度について考える懇話会」が現行の死刑制度の問題点を指摘する提言をまとめている。学識経験者のほか、林眞琴・元検事総長や金髙雅仁・元警察庁長官、与野党の国会議員やメディア関係者などが参加して今年2月から議論を重ねてきた同懇話会は、「現行の日本の死刑制度とその運用の在り方は放置することの許されない数多くの問題を伴っており、現状のままに存続させてはならない」と提言した上で、政府や国会に死刑制度の存廃や改革を議論することを求めている。
法制審議会の前会長で同懇話会の座長を務める井田良・中央大学大学院教授は記者会見で、「無辜を処刑してしまうということが事後にはっきり明らかになったという時には、おそらくもはや死刑制度というのは維持できないことになると思う」と述べている。
袴田さんは今年、ようやく再審で無罪が確定したが、刑が確定してから再審決定が下るまでの44年間、いつ死刑が執行されてもおかしくない状態に置かれていた。また、この番組でも取り上げたことがある「飯塚事件」では、冤罪の可能性が指摘される中、死刑の執行が強行され、現在遺族による再審請求が行われている。
しかし、もう1つ、裁判自体の違憲性が指摘されながら、死刑が執行されてしまった「菊池事件」をご存じだろうか。
菊池事件とは、政府がハンセン病患者に対して、過酷な隔離政策を推進し、官民一体となって患者をあぶり出す運動を展開していた1952年、ハンセン病患者を通報した村役場の元職員が殺害されたという事件。ハンセン病患者の男性が、通報されたことを逆恨みして殺したことが疑われ、予断と偏見に満ちた裁判の末に死刑判決が下された。本人が無罪を主張し再審を求めたが、1962年に死刑が執行された。
弁護団共同代表の徳田靖之弁護士は、凶器の点からも、犯人逮捕の決め手となりその後うやむやとなった親族の証言の点からも、この事件は冤罪である可能性が高いと指摘する。そして、さらに問題なのは、この裁判自体が後に憲法違反と判断されているという事実だ。
この事件の裁判は、被告がハンセン病患者であることを理由に、ハンセン病療養所菊池恵楓園に設けられた「特別法廷」で事実上非公開のなかで行われた。特別法廷は裁判所外で開かれる法廷のことで、大災害などで裁判所で裁判が行えない場合に、裁判所外の特別法廷で裁判を開くことが裁判所法で認められている。ハンセン病患者の裁判では、隔離先の療養所や専用の刑事施設に特別法廷が設けられ、1948年から72年の間に95件の裁判が開かれた。
しかし、最高裁は2016年、隔離目的でハンセン病療養所内で開かれた「特別法廷」が裁判所法に違反し、差別的な扱いは違憲だったことを認め謝罪している。また、菊池事件については、その後提起された国賠訴訟でも裁判が違憲であったことが確定している。
また、ハンセン病患者を強制隔離することを目的とした「らい予防法」については、1996年の法律廃止後に国賠訴訟が提起され2001年当時の小泉首相の控訴断念で、憲法違反であったとする熊本地裁判決が確定している。
こうした事態を受けて、菊池事件では現在、遺族が再審を求めており、地裁と検察、弁護団の三者協議が続いている。後に違憲とされた裁判で死刑が確定し刑が執行されてしまったこの事件で、もし再審が行われ無罪判決が出た場合、まさに「日本の死刑制度について考える懇話会」の井田良座長が指摘する「もはや死刑制度というのは維持できないことになる」事態が起きることになる。
人が人を裁く裁判では必ず間違いが起きる。しかし、一旦死刑が執行されてしまえば、もはや取り返しがつかない。
菊池事件、そしてハンセン病療養所内の特別法廷とは何だったのか、その背景にある差別とは、そしてこの事件が突きつける死刑制度の問題とは、などについてハンセン病国賠訴訟の共同代表でもある徳田靖之弁護士と社会学者の宮台真司、ジャーナリストの迫田朋子が議論した。
後半はこちら→so44354182
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<マル激・後半>違憲のハンセン病療養所「特別法廷」判決が揺るがす死刑制度の正当性 /徳田靖之氏(弁護士、菊池事件弁護団共同代表)
日本の死刑制度の是非が問われる事態が相次いでいる。
先月、死刑判決を受けていた袴田巌さんの再審無罪が確定したのに続き、今月13日には「日本の死刑制度について考える懇話会」が現行の死刑制度の問題点を指摘する提言をまとめている。学識経験者のほか、林眞琴・元検事総長や金髙雅仁・元警察庁長官、与野党の国会議員やメディア関係者などが参加して今年2月から議論を重ねてきた同懇話会は、「現行の日本の死刑制度とその運用の在り方は放置することの許されない数多くの問題を伴っており、現状のままに存続させてはならない」と提言した上で、政府や国会に死刑制度の存廃や改革を議論することを求めている。
法制審議会の前会長で同懇話会の座長を務める井田良・中央大学大学院教授は記者会見で、「無辜を処刑してしまうということが事後にはっきり明らかになったという時には、おそらくもはや死刑制度というのは維持できないことになると思う」と述べている。
袴田さんは今年、ようやく再審で無罪が確定したが、刑が確定してから再審決定が下るまでの44年間、いつ死刑が執行されてもおかしくない状態に置かれていた。また、この番組でも取り上げたことがある「飯塚事件」では、冤罪の可能性が指摘される中、死刑の執行が強行され、現在遺族による再審請求が行われている。
しかし、もう1つ、裁判自体の違憲性が指摘されながら、死刑が執行されてしまった「菊池事件」をご存じだろうか。
菊池事件とは、政府がハンセン病患者に対して、過酷な隔離政策を推進し、官民一体となって患者をあぶり出す運動を展開していた1952年、ハンセン病患者を通報した村役場の元職員が殺害されたという事件。ハンセン病患者の男性が、通報されたことを逆恨みして殺したことが疑われ、予断と偏見に満ちた裁判の末に死刑判決が下された。本人が無罪を主張し再審を求めたが、1962年に死刑が執行された。
弁護団共同代表の徳田靖之弁護士は、凶器の点からも、犯人逮捕の決め手となりその後うやむやとなった親族の証言の点からも、この事件は冤罪である可能性が高いと指摘する。そして、さらに問題なのは、この裁判自体が後に憲法違反と判断されているという事実だ。
この事件の裁判は、被告がハンセン病患者であることを理由に、ハンセン病療養所菊池恵楓園に設けられた「特別法廷」で事実上非公開のなかで行われた。特別法廷は裁判所外で開かれる法廷のことで、大災害などで裁判所で裁判が行えない場合に、裁判所外の特別法廷で裁判を開くことが裁判所法で認められている。ハンセン病患者の裁判では、隔離先の療養所や専用の刑事施設に特別法廷が設けられ、1948年から72年の間に95件の裁判が開かれた。
しかし、最高裁は2016年、隔離目的でハンセン病療養所内で開かれた「特別法廷」が裁判所法に違反し、差別的な扱いは違憲だったことを認め謝罪している。また、菊池事件については、その後提起された国賠訴訟でも裁判が違憲であったことが確定している。
また、ハンセン病患者を強制隔離することを目的とした「らい予防法」については、1996年の法律廃止後に国賠訴訟が提起され2001年当時の小泉首相の控訴断念で、憲法違反であったとする熊本地裁判決が確定している。
こうした事態を受けて、菊池事件では現在、遺族が再審を求めており、地裁と検察、弁護団の三者協議が続いている。後に違憲とされた裁判で死刑が確定し刑が執行されてしまったこの事件で、もし再審が行われ無罪判決が出た場合、まさに「日本の死刑制度について考える懇話会」の井田良座長が指摘する「もはや死刑制度というのは維持できないことになる」事態が起きることになる。
人が人を裁く裁判では必ず間違いが起きる。しかし、一旦死刑が執行されてしまえば、もはや取り返しがつかない。
菊池事件、そしてハンセン病療養所内の特別法廷とは何だったのか、その背景にある差別とは、そしてこの事件が突きつける死刑制度の問題とは、などについてハンセン病国賠訴訟の共同代表でもある徳田靖之弁護士と社会学者の宮台真司、ジャーナリストの迫田朋子が議論した。
前半はこちら→so44354585
(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
【後半会員限定パート】【無料前半パート】「映画『うんこと死体の復権』を深掘する!」ゲスト:関野吉晴(探検家・本作監督)、舘野鴻(絵本作家)/(2024年8月22日放送)
映画『うんこと死体の復権』公式サイト
https://www.unkotoshitai.com/
●8月22日(木)21時から生配信
●ゲスト:関野吉晴(探検家、医師)、舘野 鴻(絵本作家)
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
【無料前半パート】「映画『うんこと死体の復権』を深掘する!」ゲスト:関野吉晴(探検家・本作監督)、舘野 鴻(絵本作家)/(2024年8月22日放送)
■映画『うんこと死体の復権』https://www.unkotoshitai.com/
●日時:8月22日(木)21時から生配信
●ゲスト:関野吉晴(探検家・本作監督)、舘野 鴻(絵本作家)
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
【後半会員限定パート】大澤真幸氏出演!「新刊『我々の死者と未来の他者 戦後日本人が失ったもの』を深掘りする!」 (2024年8月8日放送)
●8月8日(木)21時から生配信
●ゲスト:大澤真幸
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
【前半無料パート】大澤真幸氏出演!「新刊『我々の死者と未来の他者 戦後日本人が失ったもの』を深掘りする!」 (2024年8月8日放送)
【番組について】
●8月8日(木)21時から生配信
●ゲスト:大澤真幸
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝
【後半会員限定パート】「躁鬱時代を生きのびるための幸福論」ゲスト:坂口恭平(2024年7月26日放送)
坂口恭平出演!「躁鬱時代を生きのびるための幸福論」
●7月25日(木)21時から生配信
●ゲスト:坂口恭平
●出演:宮台真司(社会学者) ダースレイダー(ラッパー)
●司会:ジョー横溝